血液のおもな病気

解説
 血液の病気はいろいろありますが、ここではおもな病気として、赤血球では貧血、赤血球増加症、白血球では白血病と無顆粒球(むかりゅうきゅう)症、悪性リンパ腫、多発性骨髄(こつずい)腫、血小板では、血小板減少性紫斑(しはん)病と本態性血小板血症、そのほか出血しやすい病気として血友病、播種(はしゅ)性血管内凝固などをあげておきます。

貧血〔ひんけつ〕

赤血球増加症〔せっけっきゅうぞうかしょう〕

悪性リンパ腫〔あくせいりんぱしゅ〕

多発性骨髄腫〔たはつせいこつずいしゅ〕

無顆粒球症〔むかりゅうきゅうしょう〕

紫斑病〔しはんびょう〕

本態性血小板血症〔ほんたいせいけっしょうばんけっしょう〕

血友病〔けつゆうびょう〕

播種性血管内凝固(DIC)〔はしゅせいけっかんないぎょうこ(でぃあいしー)〕

コラム

造血幹細胞移植

 患者骨髄(こつずい)での造血のしくみを再構築する目的で造血幹細胞を輸注する治療が造血幹細胞移植です。造血幹細胞は骨髄のみならず、白血球増加因子G-CSF投与後の末梢血液中、さらには臍(さい)帯(へその緒)血液中にも存在し、それぞれ特徴は異なりますが造血幹細胞移植に用いられます。それぞれ、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植と呼ばれます。
 造血幹細胞移植では、白血球の血液型ともいわれるHLAの遺伝子型のタイプが一致(もしくは、ほとんど一致)したヒトから移植を受けることが必要とされています。HLAとは、赤血球を除くほとんどすべての体内の細胞の表面にあらわれているたんぱく質の標識のようなもので、自己と非自己を認識するために用いられています。HLAが異なるヒトから移植を受けると、移植したリンパ球が全身を非自己と認識して攻撃してしまう、移植片対宿主病(GVHD)という副作用が強く出てしまいます。
 HLAの遺伝子は2セットあり、それぞれ両親から1つずつ遺伝しています。そのため、兄弟間でHLAの遺伝子型のタイプが一致する確率はほぼ4分の1となります。HLAが一致する血縁者がいない場合は、骨髄バンクという組織に登録してもらっているボランティアのドナーさんからの造血幹細胞移植を目指します。骨髄バンクでは、ドナー登録の際にあらかじめHLAの遺伝子型が調べられており、リストアップされたHLAが適合するドナーさんに提供をお願いするという流れになります。骨髄バンクのドナーさん以外から移植を受ける方法としては、臍帯血バンクに保存してあるHLA適合臍帯血を取り寄せて移植するという方法もあります。
 このほか、患者さん自身の骨髄、末梢血液中の造血幹細胞を移植目的で計画的に十分量採取・冷凍保存しておき治療に用いることもあり、自己骨髄移植、自己末梢血幹細胞移植と呼びます。
 造血幹細胞移植の適応となる病気は、再生不良性貧血のように造血機能不全におちいった病気か、白血病、悪性リンパ腫のような血液の悪性の病気です。血液の悪性の病気の場合、まず放射線治療、大量抗がん薬投与で悪性細胞を根絶させることが目的の1つで、その結果失われた骨髄機能を再構築するために移植をおこないます。また、移植したドナーさん由来のリンパ球が白血病細胞や悪性リンパ腫細胞を免疫的な機序で攻撃することで治療効果が得られることがわかっており、移植片対白血病(GVL)効果と呼ばれて造血幹細胞移植をおこなう目的の1つとされています。前述のGVHDとこのGVLは表裏一体の関係であり、移植後も副作用をなるべく出さずに最大限の治療効果が出るように、免疫抑制剤の量が調整されます。
 造血幹細胞移植は、それ以外の方法では治癒することができない血液の病気を治すことができる可能性のある治療ですが、抗がん薬や放射線治療による副作用や、GVHDや重症感染症といった合併症の危険も高い治療です。治療によるメリットとデメリットをよく考えて、移植したほうがよいかどうかを検討する必要があります。一般的には、高齢の人では治療によるデメリットが若い人にくらべて高くなってしまうため、移植がおこなえないことも多いのが現状です。