先天性心疾患には、正常と異なる部位や程度によっていろいろな型があり、症状もさまざまですが、大きく分けるとチアノーゼ(くちびるや肌の色が紫がかって見える状態)のあるものとないものに分類されます。心臓の左右の部屋を隔てる壁に孔(あな)があいていたり、異常な血管のつながりがあって、そこから酸素の少ない血液(静脈血)が全身に送り出される場合に、チアノーゼがみられます。
孔や異常血管を通して、酸素を多く含む血液が再度肺に送り出される場合にはチアノーゼはなく、再度血液を肺に送り出すという余分な仕事が心臓の負担になるため、量が多ければ
心不全となります。
より複雑な先天性心疾患では、心臓の部屋の数が少なかったり、あるいは片側の部屋の発育がわるかったり、一部の弁が閉鎖していたり、血管のつながりが入れ替わっていたりします。このような複雑な心疾患では、チアノーゼと心不全の両者がみられることが多くなります。
先天性心疾患の検査は、
心臓超音波検査(心エコー検査)が中心となります。心エコー検査とは、超音波を心臓や血管に当てて、その反射を記録して心臓や血管のかたちと血液の流れを調べる検査です。これによって孔や異常な血管、狭い弁や血管などがあることが診断でき、その部分での血液の流れをみることで心臓にどんな負担がかかっているかがわかります。
手術の必要性や手術方法を決定するためには、よりくわしい検査を追加することがしばしばあります。
心臓カテーテル検査で、心臓血管のいろいろな場所の圧や孔による血液の漏れの程度を調べたり、MRI(磁気共鳴画像法)やCT(コンピュータ断層撮影)検査でかたちの確認や血流の状況・周囲の構造との位置関係をあきらかにします(
CT・MRI検査)。どんな検査を組み合わせるかは、患者さんの病気の種類や年齢などによって決められます。
また、最近ではお母さんのおなかの中にいる赤ちゃんの心臓の病気が心エコー検査でわかることが多くなっており、生まれてすぐに具合のわるくなる病気に対して治療を準備することもできるようになりました。
先天性心疾患の治療は、基本的には外科的な手術がおこなわれます。孔をふさぐ、異常血管をしばって閉じる、狭い部分をひろげるといった処置が胸を開いて直接病変部を見ながら実施されます。多くの病気はこれらの処置により、血液の流れを正常な心臓と同じ流れにすることができますが、血液の流れは同じになっても手術を受けたことによるさまざまな問題がありうるため、薬の内服を続けることも少なくありません。また、定期的に検査を受けて経過観察を続けることが一般的です。
複雑な心疾患の一部では、心臓のポンプ機能をからだへの血液の送り出しのみにしか使えない病気があります。この場合は、肺にはポンプなしで血液が流れる右心バイパスという手術の治療になりますが、運動能力のハンディキャップや長期的に起こってくるさまざまな合併症の問題があるといわれています。
近年では、病気の種類によってはカテーテルを用いて孔や血管を閉鎖したり、開きのわるい弁をひろげたりすることで、外科的手術を受けずに修復処置ができるようになっています。
(執筆・監修:
公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 小児循環器科 部長 矢崎 諭)