腎臓の病気 家庭の医学

解説
 腎臓の病気の名称は複雑で、わかりにくい面があるかもしれません。一つの病気にいくつかの名称がつけられているからです。
 腎臓の病名のつけかたは次の3通りあります。
 ①症候(病気の症状)を主体としてつけられている名称
 ②病態の経過と機能を考慮してつけられている名称
 ③主として顕微鏡で見た糸球体や尿細管の形の変化をめやすに特定の病気を決定してつける名称
 ①の例はネフローゼ症候群や腎炎症候群、②は急性腎障害慢性腎臓病、③はIgA腎症などです。このように腎臓の病気には、同じ病気でもいくつかの名称がつけられていることがありますから、混乱しないよう注意してください。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
コラム

腎臓病と新型コロナウイルス感染症

 慢性腎臓病が新型コロナウイルス感染のリスクとなることが報告されています。その要因として糖尿病が原因の慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病)が多いこと、慢性腎臓病による尿毒素の蓄積が免疫能の低下をもたらすことなど、さまざまな要因が考えられています。さらにステロイドや免疫抑制薬を服用している腎炎やネフローゼ症候群の人も、かかりやすい可能性があります。

■レニン・アンジオテンシン系抑制薬の服用について
 当初この類いの薬を服用している人は新型コロナウイルス感染症になりやすいことが想定されていましたが、現時点(2022年2月)では新型コロナウイルス感染症を発症しやすくなる、もしくは重症化することは示されていません 。したがって現時点ではレニン・アンジオテンシン系抑制薬を変更・中止する必要はないと考えられます。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
コラム

女性と腎臓病

 女性には妊娠(にんしん)・出産という大切な役目がありますが、腎臓に障害があると妊娠の継続や出産に問題が生じたり、また妊娠高血圧症候群で腎臓に障害が残る可能性があります。また女性は尿路系の感染症になりやすいため、腎盂(じんう)腎炎をくり返すと年をとってから腎機能が低下する場合もあります。

■妊娠に際しての注意点
 かつて、単にたんぱく尿が陽性というだけで妊娠・出産はまかりならぬとされていた時代もありました。現在では極端ないいかたをすれば透析を受けている人でも妊娠が可能です。明確な基準はありませんが、糸球体濾過(ろか)量が75mL/分以上であれば可能性はあります。副腎皮質ステロイド薬を用いていたネフローゼ症候群の人が出産した例も報告されています。ですから腎臓病をもっている女性は、必ず医師に相談してから妊娠・出産を計画されることをおすすめします。
 妊娠高血圧症候群は一般には出産後1カ月半ほどで血圧も正常になり尿たんぱくも消失することが多いのですが、時に尿たんぱく陽性や血圧上昇が出産後3カ月以上にわたり残ることがあります。
 そのようなときには腎臓専門医に相談してください。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)