新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが8日、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行するのを機に、小売店や外食店の多くは従業員に「推奨」してきたマスクの着用を「任意」とし、個人の判断に委ねる。一方、「お客さまへの配慮」(小売り大手)から着用を続ける動きも残る。「顔の見える接客」は、来店客の反応を探りながら広がっていくことになりそうだ。
 三越伊勢丹ホールディングスや松屋は8日から、接客を担当する従業員のマスク着用を個人の判断に任せる。飛沫(ひまつ)防止のアクリル板は大半を撤去する。大手百貨店幹部は「化粧品などはマスクをしない方が売れる」と明かす。
 セブン―イレブン・ジャパンなど大手コンビニエンスストアのほか、流通大手のイオンも着用を任意とする。日本マクドナルド、ゼンショーホールディングスなど、大手外食でも従業員の判断に委ねる動きが広がる。フィットネスクラブを運営するティップネスは、着用をインストラクターらの判断に任せる。
 旅客輸送では、JR東日本など鉄道各社が乗務員や窓口業務を担う駅員らに求めていたマスクの着用を任意とする。
 既に個人の判断としている航空業界では、日本航空の客室乗務員が8日から機内食を配る際にビニール手袋を着用しなくなる。全日本空輸は、旅客窓口での消毒液の設置や保安検査場での検温をやめるという。
 一方、着用を続ける企業もある。吉野家ホールディングスは「お客さまから『なぜマスクをしないのか』と言われる懸念がある」(河村泰貴社長)と理由を説明する。モスフードサービス、高島屋も着用を継続する予定だ。
 ファミリーマートの細見研介社長は「マスクに対する感度が地域で違う。全国一律で外すことはない」と指摘する。マスクを任意にする他の小売り関係者も「実際にどれだけの従業員が外すか分からない。接客風景は、すぐには変わらないかもしれない」と話している。 (C)時事通信社