ハヤミミDr.純子のメディカルサロン

第51回 検温をストレスにしないために
~1日に体温がどう変化するかを知っておこう~

 新型コロナ感染拡大をきっかけに、自分の体温に過敏になった人から、不安を聞くことが増えました。

 これまで、自分の平熱について、ほとんど調べたことがなかったものの、3月以降、改めて体温計を購入し、測定を始めたといった人たちです。

サーモグラフィーによる来店者の体温確認。写真は衣料品などの売り場にも範囲を拡大して営業を再開した「阪急うめだ本店」=2020年5月21日、大阪市北区【時事通信社】

 1日に何回も測定して不安になったり、外出先の飲食店などで、入店時に体温測定を求められ、予想より高くて不安になったり。そういった声を聞きます。

 ◆心配になって体温計を購入

 30代男性のAさんはこれまで、自分の体温を測定したことがほとんどありませんでした。

 大きな病気をしたことがなく、たまに風邪で受診することはあったものの、たいてい38度どまりだったので、検温の必要性を感じていなかったそうです。

 Aさんは営業職で、自粛中はテレビ会議を利用して営業活動をして、成果を感じていたそうです。

 ところが、自粛解除後、出社するようになると、出社時の体温測定が義務化され、社屋に入ってすぐの手洗い励行が求められました。

 退社後についても、5人以上の会食への参加が禁止されるなど、感染防止が徹底されました。

 Aさんは一人暮らしで、退社後に外食をします。その際、「感染してはいけない」「感染したら、会社からよく思われない」と心配になり、体温計を購入して、測定するようになったそうです。

 そして、測定すると、毎日、かなり変動するので、ちょっと上がると、「外出して大丈夫だろうか」と不安になるそうです。

 ◆検温しないと不安に

 やがて、退社後に1人で飲食店に行くのも、控えるようになりました。以前は、ジムにも通っていましたが、「もし感染したら、周りから何を言われるか分からない」という怖さで、ジムが再開しても、まだ一度も行っていません。気分的にも閉塞感が募って、憂鬱(ゆううつ)になっています。

 自粛は継続するにしても、「1日に何度も体温を測らないと不安」ということだけでも、解消したいということでした。

 自分の平熱が分からないという人は、かなり多いです。女性は、基礎体温などを測ることがあり、体温計に比較的なじみがある人が多いのですが、若い男性で、病気と無縁というAさんのような人は、特になじみがないと思います。

 人の体温は、健康な状態で36.55~37.23度といわれていますが、1970年代から90年代で調べると、平熱が低くなる傾向がみられるということで、低体温傾向があるといわれています。

 一方で、体温が1度下がるだけで、体内の酵素の働きや基礎代謝、血流が低下します。ですので、感染症予防のためには、低体温傾向は望ましくはないとされています。

 また、体温には民族差があり、これは遺伝因子が要因とされています。

 ◆サーアカディアンリズム

 Aさんは、1日に何回も体温を測定し、変動するごとに不安になっているようですが、体温には「サーアカディアンリズム」というリズムがあることを知っておいていただきたいものです。

 人の体温は、早朝が最低値で、起床とともに上がり始め、夕方から夜にかけて最高になるとされています。

 ですから、Aさんも、仕事が終わって帰ろうとするころには、体温が上昇していると思われます。

 この体温を見て不安になり、外食を諦めて帰宅している可能性があります。家で食事をするのは感染予防には最適ですが、毎日、こうした状況が続き、閉塞感を感じているのだと思います。

 食事をした後にも、一過性の体温上昇がみられます。これは「食事誘発性熱産生」といわれています。炭水化物や脂質に比べ、たんぱく質では、同じ量でも、体温上昇が見られるとされています。

 ◆ストレス性の発熱も

 このように、1日のうちで体温は変動するので、測定する場合、時間を決めておくといいでしょう。

 起床時、夕方、と決めておき、ストレス性の発熱も、何か特別な症状があるとき以外は、体温について神経過敏にならないようにする必要があると思います。

 というのは、体温について、不安が常にあるようなストレス状態は、望ましくないからです。ストレス状態が続くと、心因性の発熱を起こすことも知られています。うつ状態で発熱が続くということもあるので、体温に対して、過敏になるのは避けたいものです。

 Aさんの不安は、体温の数字だけでなく、「もし感染したら、周りから非難される」という恐怖が加わっていると思われました。

 仕事場と家の往復で人との接点が少なくなり、精神的ゆとりが減少していることも背景にあるようです。仕事以外でも、インターネットなどを利用して、友達と交流するといった工夫が必要でしょう。

(文 海原純子)

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