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接種翌日に鈍痛が増す
~コロナワクチン、老記者が体験~

 高齢者を中心に新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中で、副反応への懸念も取り沙汰されている。66歳になった老記者の私の接種体験を中心に報告したい。私は注射された上腕部に鈍く重苦しい痛みが生じたが、副反応には個人差が伴う。接種に当たっては、かかりつけ医に相談するなどして、正しい情報を得るようにしたい。

 ◇体温37.5度以上は不可

 私が接種を受けたのは6月2日、東京都中野区の野方区民活動センターという施設だ。指定されたのは午前11時45分。センターに着いたのは15分前だが、既に数人が待っていた。私を含め同時刻の接種だ。ほんの2、3分で係の人から「3階の接種会場へ行ってください」と告げられた。

 接種を受けるためには、まず検温から。コロナ禍が続く中で商業施設やイベント会場などに入る際、検温することは常識となった。体温を測ってもらうと、36.4度。37.5度以上では接種を受けることができない。これは中野区に限ったことではない。高齢者に続き、その下の世代が接種の対象となる。仕事や育児などに忙しく、「ちょっと、熱があるな」と自覚しながら無理を押して会場に赴く人もいるだろう。しかし、それは通らない。

ワクチン接種の前に問診を受ける=東京都内

ワクチン接種の前に問診を受ける=東京都内

 ◇5~6分で痛みを覚える

 検温に続いて予診票を提出し、次が医師による問診である。

 「きょうの体調はどうですか?」

 「普段と変わりません」

 「インフルエンザ予防接種を受けたことがありますか?」

 「毎年ではありませんが、昨年秋は受けました」

 「腫れたりしたことはありますか?」

 「ありません」

 問診を終えて接種へと進む。米ファイザー製のワクチン5回分が入った注射器が用意されていた。注射をする看護師が「針は細いですが、チクッとしますよ」と話す。注射が苦手な私は緊張したが、インフルエンザワクチンの注射よりも痛くないと感じた。続いて経過観察のために15分間待機する。待機スペースでは、若い男性スタッフが2回目の予約を済ませていない人のために予約を取っている。待機中の男性が「お若いですね」と声を掛けると、「新入社員です」。会社は区から業務を請け負っているという。医師や看護師だけでなく、接種を円滑に行うためには人手が要ることが分かる。

 5~6分たった頃、肩に近い左の上腕の接種部分が痛み出した。刺すような痛みではなく、鈍い痛みだ。それが夕方にかけ、じわりと広がっていった。いつもより早めに就寝したが、左側に寝返りを打つと痛みで目が覚めた。翌日になると、鈍痛はさらにひどくなり、腕を持ち上げることが難しくなった。ただ、体温は接種当日、翌日とも36・5度前後で推移し、発熱症状はなかった。

高齢者に新型コロナウイルスワクチンを接種=東京都内

高齢者に新型コロナウイルスワクチンを接種=東京都内

 ◇「何てことなかった」と91歳女性

 以上はあくまでも私の場合で、接種後の副反応は個人差が大きいと言われる。接種を受けた高齢者の家族らの声を拾ってみた。

 同僚の父は85歳で、私より年上だ。東京都杉並区で集団接種を受けた。「接種直後は何ともなく、その日の夜になって接種部に痛みを感じたと父は言っていた」。腫れたり赤みを帯びたりはしなかったが、痛み自体は接種後1日ほど続いたそうだ。特に接種の翌日の方が痛みは強かったという。

 首都圏で暮らす、ある女性は91歳になる。デイサービスに通っているが、一人で買い物に行くなど日常生活では元気だ。接種を受けるつもりだったが、テレビなどで盛んに報じられた副反応のニュースを見て怖くなった。それでも長女の勧めでワクチンを接種。「何てことはなかったわ。やってよかった」と話したという。

 静岡市の特別養護老人ホームでお世話になっている私の母は、100歳に手が届こうとしている。面倒を見てくれているのは、同市内に住む私の妹だ。「本人の同意が前提だけど、接種はどう思う?」。電話での妹の質問に「特養にいる以上、受けた方が良いだろうね」と答えた。接種は施設入居者のほとんどが受け、母も含め重い副反応はなかったと聞いている。

 ◇不安なら、かかりつけ医に相談

 会社の後輩から声をかけられた。「1回目が無事に済んで良かったですね。でも、2回目の方が痛いそうですよ」。妻も同じようなことを言う。1回目の接種で免疫力が高まっているので、2回目の方が副反応がより強くなるのは当然だろうかなとも思う。それでも、気が重くなる。

 うわさやネット上の情報をうのみにすることは危険だ。付き合いの長いジャーナリストの友人は接種を受けた高齢者とその家族らに話を聴いた。その上で「重い痛みを感じた人もいるし、そうではない人もいる。人によって違う」と語る。

 ワクチン接種は強制ではない。住んでいる自治体から接種券が送られてきた時に、悩むことはあるだろう。都内のある女性は高齢の母のために接種を予約した。しかし、「副反応が怖い」という弟の意見を受けて、しばらく様子を見ることにした。ファイザーが作った事前の説明書には接種を受けるに当たり、心臓や腎臓、肝臓、血液疾患などの基礎疾患がある人は注意が必要だとある。でも、基礎疾患以外の病気は大丈夫か? 不安を感じたら、事前にかかりつけ医に相談することを勧めたい。(鈴木豊)

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