【パリ時事】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は5日、新型コロナウイルスの感染者・死者の減少が続いているとして、2020年1月末に宣言した緊急事態の終了を発表した。4日に開いた専門家会合で、新型コロナの流行がもはや緊急事態に当たらないという見解が示されたことを受け、宣言の解除に踏み切った。危機対応に追われた世界は、宣言から3年3カ月余りを経て「平時」移行への大きな節目を迎えた。
 テドロス氏は記者会見で「新型コロナによる(公衆)衛生上の世界的な緊急事態が終わったと宣言したい」と表明。ただ、宣言解除が「新型コロナが世界的な脅威でなくなったことを意味するわけではない」とも述べ、引き続き警戒する姿勢を示した。
 3日までにWHOに報告された世界の感染者は累計7億6500万人を超え、死者は692万人余り。ワクチン接種は延べ133億回に達した。未報告を含む実際の死者数は、WHOの集計をはるかに上回っているとみられ、テドロス氏は「(報告の)数倍で、少なくとも2000万人」に上るとの見方を示した。
 一方、今年に入って感染者・死者は大きく減少。4月末までの28日間の感染者数は、直前の28日間に比べ17%減の約280万人、死者数は30%減の約1万7000人だった。
 日本では3月、新型コロナ対策のマスク着用が個人の判断に委ねられたほか、今月8日には新型コロナ感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する。米国でも「国家非常事態宣言」が11日に解除される。中国では、感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策が終了した。
 テドロス氏は20年1月30日、コロナの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言。同年3月11日にはコロナの「パンデミック(世界的流行)」を表明した。その後、3カ月ごとに専門家会合を開いて感染状況を点検し、宣言解除の是非を検討してきた。 (C)時事通信社