米・University of Pittsburgh School of MedicineのNader Shaikh氏らは、小児の急性副鼻腔炎に対する抗菌薬治療において、上咽頭からの細菌検出の有無や鼻汁の色によって有効性が異なるか否かを検討するランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、3割の患児で抗菌薬の有効性が低かったとし、その理由が明らかになったとJAMA2023; 330: 349-358)に報告した。

層別ランダム割付で、抗菌薬群とプラセボ群を比較

 急性副鼻腔炎とウイルス性上気道炎は、症状の大部分が重複する。また、急性副鼻腔炎と診断された患児の中には、抗菌薬による治療効果がほとんど認められないケースがある。

 Shaikh氏らは、上咽頭からの細菌検出の有無や鼻汁の色によって、抗菌薬治療を行うか否かを判断できるかについて検討する目的でRCTを実施した。

 対象は、米国小児科学会の臨床診療ガイドラインに従い2016年2月~22年4月に米国のプライマリケア6施設で急性副鼻腔炎と診断された患児のうち、急性副鼻腔炎が持続または増悪した515例(2~11歳)。小児鼻副鼻腔炎症状評価尺度(Pediatric Rhinosinusitis Symptom Scale;PRSS、0~40点)の初回スコアが9点以上の者を組み入れた。症状の持続は11~30日間症状(鼻、咳、または両方)が改善しない例、増悪はウイルス性上気道炎から回復したとみられる患児で、症状改善から6〜10日の間に鼻や咳の症状が再燃した例、または新たに発熱が出現した例と定義した。

 対象を、抗菌薬群〔アモキシシリン(90mg/kg/日)+クラブラネート(6.4mg/kg/日)〕とプラセボ群に1:1でランダムに割り付け、10日間経口投与した。色付き(黄色または緑色)の鼻水の有無および咽頭拭い液の細胞培養による細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ菌)の有無で層別化した。

 主要評価項目は、診断後10日間のPRSSスコアに基づく症状の程度とした。

モラクセラ菌検出の有無は抗菌薬の有効性に関連せず

 515例のうち選別基準を満たした510例(2~5歳64%、男性54%)を解析したところ、平均PRSSスコアはプラセボ群(250例)の10.60点(95%CI 10.27~10.93点)に対し、抗菌薬群(240例)では9.04点(同8.71~9.37点)と有意に低かった(群間差-1.69点、95%CI -2.07~-1.31点)。

 症状消失までの期間は、プラセボ群の9.0日に対し、抗菌薬群では7.0日と有意に短かった(P=0.003)。

 上咽頭で細菌が検出された患児は355例(72%)、検出されなかった患児は138例(28%)だった。抗菌薬群とプラセボ群の平均PRSSスコアの群間差は、細菌検出児の-1.95点(95%CI -2.40~-1.51点)に対し、非検出児では-0.88点(95%CI -1.63~-0.12点)と、抗菌薬による治療効果が低いことが示された(交互作用のP=0.02)。

 色付きの鼻汁が出た患児は333例(67%)、透明な鼻汁が出た患児は163例(33%)。抗菌薬群とプラセボ群の平均PRSSスコアの群間差は、それぞれ-1.62点(95%CI -2.09~-1.16点)、-1.70点(同-2.38~-1.03点)で、鼻汁の色の有無で治療効果に有意差はなかった(交互作用のP=0.52)。

 さらに探索的解析の結果、治療効果の大部分はインフルエンザ菌と肺炎球菌の存在によるもので、モラクセラ菌検出の有無と抗菌薬の有効性に関連はなかった。

 以上を踏まえ、Shaikh氏らは「上咽頭に細菌を保有していなかった28%の患児では、抗菌薬治療の効果が低かった。急性副鼻腔炎患児における抗菌薬の不適切使用を減らす合理的な方法は、処方を診断時に上咽頭に細菌を保有している患児に限定することである」と結論している。

(今手麻衣)