基礎インスリン治療で血糖コントロール不良な2型糖尿病患者において、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド追加の有効性と安全性を食直前インスリン投与との比較で検討した研究は存在しない。米・Velocity Clinical ResearchのJulio Rosenstock氏らは、国際非盲検第Ⅲb相ランダム化比較試験にてインスリングラルギンへの追加治療として週1回チルゼパチドと1日3回食直前インスリンリスプロの有効性と安全性を比較。チルゼパチドは食直前インスリンと比べ低血糖が少なく、HbA1c値の低下と体重減少に優れていたことをJAMA2023年10月3日オンライン版)に報告した。

15カ国で1,428例をランダム化

 2020年10月~22年11月に、15カ国135施設で基礎インスリンを処方されていた18歳以上で血糖コントロール不十分の成人2型糖尿病患者1,428例(平均年齢59歳、女性58%)を登録。基礎インスリンを全例インスリングラルギンとし、メトホルミン以外の血糖降下薬は中止して、インスリングラルギンに週1回のチルゼパチド皮下注5mg(243例)、同10mg(238例)、同15mg(236例)を追加する群または1日3回食直前にインスリンリスプロを追加する群(711例)に1:1:1:3でランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、52週時点でのHbA1c値のベースラインからの変化量におけるインスリンリスプロに対するチルゼパチド(3群の集積)の非劣性(非劣性マージン0.3%)とした。第一種過誤を調整した主要副次評価項目は、HbA1c値の変化、体重変化、HbA1c値7.0%未満の達成率におけるチルゼパチドの優越性などとした。

HbA1cの治療差は-0.98%、チルゼパチドが統計学的優越性示す

 1,428例の平均HbA1c値は8.8%、平均体重は90.5kgで、試験前の患者背景に4群間で差はなかった。1,425例が1回以上の試験治療を受け、89%が試験を完遂した。

 52週時点におけるHbA1cの平均値は、チルゼパチド群で6.69%、インスリンリスプロ群で7.67%。ベースラインからの平均変化量は、チルゼパチド群で-2.11%、インスリンリスプロ群で-1.13%とチルゼパチドの非劣性基準を満たした(治療差-0.98%、95%CI -1.17~-0.79%、P<0.001)。また、チルゼパチド群は全用量で統計学的優越性を示した(全てP<0.001)。

チルゼパチドで体重減少が大きく、低血糖少ない

 体重のベースラインからの推定平均変化量は、インスリンリスプロ群の+3.2kgに対し、チルゼパチド群では-9.0kgと体重減少においてもチルゼパチドの統計学的優越性が示された(治療差-12.2kg、95%CI -13.4~-10.9 kg、P<0.001)。

 HbA1c値7.0%未満の達成率は、インスリンリスプロ群の36%(708例中256例)に対し、チルゼパチド群では68%(716例中483例)と統計学的優越性が示された〔オッズ比4.2、95%CI 3.2~5.5、P<0.001)。

 チルゼパチド群における最も一般的な有害事象は、軽度~中等度の胃腸症状(悪心14~26%、下痢 11~15%、嘔吐5~13%)だった。

 低血糖(血糖値54mg/dL未満)の発生率は、チルゼパチド群が0.4回/年、インスリンリスプロ群が4.4回/年だった。

 これらの結果に基づき、Rosenstock氏らは「基礎インスリン治療でコントロール不良の2型糖尿病患者において、インスリングラルギンへの追加治療として、週1回チルゼパチドは食直前インスリンリスプロと比べ、低血糖が少なく、HbA1cが低下、体重が減少することが示された」と結論づけている。

(小路浩史)