日本糖尿病学会は11月2日、公式ホームページでコンセンサスステートメント「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」を公開した。昨年(2022年)9月の初版発表から、1年2カ月ぶりの改訂となる。今年4月に発売されたグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体作動薬チルゼパチドの位置付けを追記するなど、糖尿病治療薬の最新情報を盛り込む内容となった(関連記事:「日本初登場!糖尿病薬物療法アルゴリズム」)。

肥満例への投与は「慎重な判断が必要」

 今回公開されたアルゴリズムはの通りである。Step 1の肥満合併例に対する新たな選択肢としてチルゼパチドを追記し、本文でも「日本人においても血糖改善効果が非常に高く、同時に用量依存性の強力な体重減少効果も認めることから、肥満インスリン抵抗性を基盤とした糖代謝のみならず、脂質代謝改善効果なども期待できる」と記載した。

図. 2型糖尿病の薬物療法アルゴリズム

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糖尿病 2023; 66: 715-733)

 一方、同薬の非肥満例への適応については本文で「BMI 23未満の症例では使用実績がほとんどないことから、極めて慎重に判断する必要がある」とし、安全性については「頻度は低い」としながらも胆石、急性胆道系感染症、急性膵炎の発現に注意を促した。

 今回の改訂における主な変更は以下の通り。

●アルゴリズムの「Step 1:病態に応じた薬剤選択」における肥満合併例(インスリン抵抗性を想定)への選択肢としてチルゼパチドを追記

インスリン抵抗性の評価法に関して、「インスリン抵抗性はBMI、腹囲での肥満・内臓脂肪蓄積から類推するが、HOMA-IR等の指標の評価が望ましい」との文言をアルゴリズムに追記

●目標とするHbA1cが達成できなかった場合の対応として、アルゴリズムの「Step 1に立ち返り」を「冒頭に立ち返り、インスリン適応の再評価も含めて」に変更

糖尿病治療薬のリスクとベネフィットをまとめた別表にチルゼパチドを追記するとともに、考慮する項目として「持続的な副作用」「効果の持続性」を追加

●考慮すべき併存疾患として、本文で非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に言及

(平山茂樹)