千葉大学脳神経内科学准教授の三澤園子氏らは、オキサリプラチンまたはタキサン系薬による化学療法の施行中に中等症~重症の化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)を発症した成人がん患者52例を対象に、神経障害性疼痛治療薬ミロガバリンの有効性と安全性を探索的非盲検単群介入研究で検討。その結果、化学療法施行中のミロガバリン1日2回12週間経口投与により疼痛スコアが有意に改善し、化学療法の継続・完遂に貢献する可能性が示されたとBMC Cancer2023; 23: 1098)に発表した。

疼痛スコアが30.9%低下

 今回の研究は、国内12施設が参加するMiroCIP Studyの一環として行われた。対象は、大腸がん(65.4%)、非小細胞肺がん(13.5%)、乳がん(11.5%)、胃がん(9.6%)に対するオキサリプラチン(65.4%)またはタキサン系薬(34.6%)による化学療法中に、有害事象共通用語基準(CTCAE)version 5.0に基づきグレード2以上(中等症~重症)のCIPNと診断され、疼痛のNumeric Rating Scale(NRS)スコアが4以上の成人患者52例(平均年齢65.5歳、男性55.8%)。

 ミロガバリン投与期間は12週間とし、5mgを1日2回1週間経口投与後に10~15mg(腎機能低下例では5~7.5mg)1日2回投与まで漸増した。主要評価項目は、ミロガバリン投与開始後12週時における疼痛NRSスコアのベースラインからの変化量とした。

 解析の結果、平均NRSスコアはベースラインの5.5±1.5と比べて12週時には3.8±2.2と30.9%有意に低下した(平均変化量-1.7、95%CI -2.4~-1.0、P<0.001)。ベースラインのNRSスコアが6以上の患者15例に限定すると、スコア低下幅が44.0%とさらに大きかった(同-3.3、-5.0~-1.5、P=0.002)。

 また、副次評価項目とした12週時の痺れ感(tingling)のNRSスコアもベースラインと比べて有意に低下していた(平均変化量-1.2、95%CI -1.9~-0.4、P=0.003)。

化学療法の継続・完遂にも貢献の可能性

 化学療法薬の減量、休薬、投与中止はそれぞれ4例(7.7%)、12例(23.1%)、18例(34.6%)に発生したが、CIPNに起因するものは3例(5.8%)、1例(1.9%)、2例(3.8%)にすぎなかった。

 CTCAEおよび神経障害スコア(Modified Total Neuropathy Score-Reduced)に基づくCIPNの重症化、EuroQol 5-Dimension(EQ-5D)質問票に基づくQOLの低下は認められなかった。

 有害事象は16例(30.8%)に発現し、最も発現率が高かったのは傾眠(13.5%)、次いでめまい(9.6%)、末梢性浮腫(3.8%)の順だった。重篤な有害事象は4例報告されたが〔新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡、がん進行に伴う腎盂腎炎乳がん進行、COVID-19各1例〕、いずれもミロガバリン投与との関連はなかった。

 以上を踏まえ、三澤氏らは「ミロガバリンは全般的に忍容性が高く、CIPNに起因する疼痛および痺れ感に対して有効で、化学療法の継続・完遂に有用な可能性がある」と結論している。

太田敦子