発熱と背中の痛み―腎盂腎炎
トイレの我慢は禁物
腎臓で作られた尿がたまる腎盂(じんう)や腎臓自体に細菌が繁殖して起きた炎症を「腎盂腎炎」という。適切な治療を行わないと、腎臓の働きが低下するだけでなく、命を落とす危険もある。東京慈恵会医科大学葛飾医療センター(東京都葛飾区)泌尿器科の清田浩教授に予防法を含めた注意点を聞いた。
処方された薬は最後まできっちり飲み切って
▽死につながることも
健康な人の尿やその通り道は無菌だが、尿の出口から侵入した細菌が尿道を通ってぼうこう、尿管をさかのぼり、腎盂にたどり着いて腎盂腎炎を引き起こすことがある。尿道が短く、性交渉の際に侵入した細菌がぼうこうに達しやすいため、性的活動期の女性に多いほか、前立腺の病気などでぼうこうの働きが悪くなった高齢者もかかりやすい。また、糖尿病患者やステロイド薬使用者は重症化しやすい。
急性の腎盂腎炎では、38度以上の高熱が出るほか、感染した腎臓側の背中をたたくと痛みが響くのが特徴だ。高熱が出ると多くの人は近くの内科クリニックを受診するが、発熱に加えて典型的な症状がある場合は、腎盂腎炎を想定して泌尿器科か腎臓内科への受診が望ましい。
感染を起こす細菌として最も多いのは大腸菌で、時に死につながることもある。「尿路にできた石が感染のきっかけとなる腎盂腎炎は、抗菌薬の投与だけでは治りにくく、2~3%が死亡します。また、ぼうこうの尿が腎臓に逆流してしまう先天奇形がある乳幼児は、感染を繰り返すため逆流を防ぐ手術が必要です。感染の背景を把握して、適切な処置を行わないといけません」と清田教授。
▽原因菌の特定が重要
ほとんどの患者は適切な抗菌薬による治療で改善する。ただし、通常の抗菌薬が効かないタイプの大腸菌が増えているほか、大腸菌以外の細菌が原因の場合もある。清田教授は「しっかりと治すには、原因菌に合わせた抗菌薬を、処方された1~2週間分すべて飲み切ってください。1回で完全に治すことが原則です」と強調する。
熱が引いたからと薬を途中でやめてしまうと、再発を繰り返し慢性化する。腎盂腎炎が慢性化すると、微熱程度しか出ず、痛みも弱いため気付きにくいが、徐々に腎臓の働きが弱まり透析に至るケースもあるという。
清田教授は「ぼうこうの中に尿をためておく時間が長いと、細菌が繁殖しやすくなります。排尿すると、尿道をさかのぼろうとする細菌が洗い流されるので、水分を多く取り、小まめに尿を出すことが予防につながります」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/06/12 06:30)