新規LDLコレステロール(LDL-C)低下薬bempedoic acid(ベンペド酸)は、米国では2020年に承認され、日本では第Ⅲ相試験を実施中である。英・Imperial College LondonのKausik K. Ray氏らは、心血管高リスクのスタチン不耐例を対象にベンペド酸の心血管イベント抑制効果を検証した第Ⅲ相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験CLEAR Outcomesのサブ解析で、糖尿病患者における同薬の心血管への影響、非糖尿病患者における糖尿病の新規発症リスクとHbA1cを評価。ベンぺド酸は、糖尿病の有無にかかわらずLDL-C値と主要心血管イベントリスクを低下させ、懸念されていた糖尿病の新規発症リスクを高めなかったとLancet Diabetes Endocrinol(2023年12月4日オンライン版)に報告した。
糖尿病の有無別にMACEと新規糖尿病リスクをプラセボと比較
スタチンはLDL-Cと心血管イベントを低下させるが、糖尿病の新規発症リスクを高めることが懸念されている。ベンペド酸にはこうしたリスク上昇がないことが、短期(12~52週)の第Ⅲ相ランダム化試験で示されているが、CLEAR Outcomesで、より大規模かつ長期の検討を行った。32カ国1,250施設においてスタチン不耐でLDL-C 100mg/dL以上の心血管高リスク患者1万3,970例を、ベンペド酸1日1回180mgまたはプラセボを投与する群に1:1でランダムに割り付けた。主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、冠血行再建術の複合(MACE-4)とし、intention-to-treat集団において評価した。
全体における主解析結果は、今年(2023年)3月にN Engl J Med(2023; 388: 1353-1364)に発表。ベンペド酸は忍容性も良好で、MACE-4のリスクを13%有意に抑制したことなどが報告された(関連記事「新クラスの脂質低下薬、心血管イベントを抑制」)。今回発表されたサブ解析では、ベースライン時に糖尿病を有していた患者におけるベンペド酸の心血管への影響、非糖尿病患者における糖尿病の新規発症およびHbA1c上昇への影響を検討した。
糖尿病の有無にかかわらずMACEリスクとLDL-Cが低下
ベースライン時に糖尿病を合併していたのは45.6%、前糖尿病例は41.5%、正常血糖値例は12.9%だった。中央値3.4年の追跡では、糖尿病例においてプラセボ群と比べベンペド酸群で、MACE-4のリスクが相対的および絶対的に有意に低下した〔ハザード比(HR)0.83、95%CI 0.72~0.95、絶対リスク低下2.4%〕。
前糖尿病例と正常血糖値例でも同様のMACEリスク低下が確認され、3つのサブグループ間で有意差は認められなかった(交互作用のP=0.42)。
またベンペド酸群では、糖尿病例、前糖尿病例、正常血糖値例のいずれでも、6カ月時点のプラセボ補正LDL-C値および高感度C反応性蛋白(hsCRP)値が有意に低下した(いずれもP<0.001)。
糖尿病の新規発症率と試験終了時のHbA1c値はプラセボと同等
前糖尿病例および正常血糖値例における糖尿病の新規発症率は、ベンペド酸群とプラセボ群で同等だった(11.1% vs. 11.5%、HR 0.95、95%CI 0.83~1.09)。また、両群における12カ月後および試験終了時のHbA1c値も、ベンペド酸群とプラセボ群で同等だった。
以上の結果を踏まえ、Ray氏らは「ベンペド酸は、その有効性と心代謝における安全性により、糖尿病の有無にかかわらず臨床の選択肢となりうる」と結論づけている。
(小路浩史)