酒皶は顔面に生じる慢性炎症性疾患で、原因は不明である。これまでにさまざまな疾患との合併、特にうつ病や高血圧、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患などとの関連が指摘されている。トルコ・Giresun UniversityのSevgi Kulaklı氏らは、酒皶患者と健康人を対象に動脈硬化との関連について検討する前向き横断研究を実施、結果をJ Cosmet Dermatol(2023年11月22日オンライン版)に報告した。酒皶患者では、炎症や動脈硬化など潜在的な心血管リスクが上昇することが示唆された(関連記事「胃酸抑制薬の長期使用が酒皶発症に関連」)。
hs-CRP、CIMT、血管石灰化抑制因子Fetuin-Aを評価
慢性炎症が動脈硬化や心血管疾患の発症および進展に関与することはよく知られており、皮膚疾患では乾癬が心血管疾患の独立した危険因子であることが明らかになっている。酒皶についても心血管疾患との関連を見た検討が複数行われているが、否定的な報告もあり一貫した結論は得られていない。
Kulaklı氏らは酒皶患者50例(酒皶群:女性37例、男性13例、平均年齢41.7歳)と健康人49例(対照例:同36例、13例、40.3歳)を対象に、動脈硬化リスクを比較検討する前向き横断研究を行った。
酒皶群の内訳は紅斑性24例、丘疹膿疱性24例、膿疱性2例で、10例が眼病変を合併していた。対照群は紹介による雪だるま式標本抽出法により、自施設の職員を登録した。
評価項目は炎症マーカーの高感度C反応性蛋白(hs-CRP)、肝臓で合成・分泌される血管石灰化抑制因子のFetuin-A、動脈硬化指標の頸動脈内膜中膜複合体厚(CIMT)とした。なお、Fetuin-Aを酒皶患者の研究に用いた報告は今回が初めてという。
動脈硬化リスクが高く、眼病変合併例はさらに高リスク
検討の結果、酒皶群は対照群に比べて、血清hs-CRP値と平均CIMTが有意に高く(P=0.009、P=0.001)、動脈硬化リスクの上昇が考えられた。血清Fetuin-A値は酒皶群で有意に低く(P<0.001)、血管の石灰化および動脈硬化の進展の可能性が示された。さらに眼病変の有無で血清hs-CRP値を比較したところ、眼病変を有する酒皶例で有意に高かった(1.61mg/L vs. 3.03mg/L、P=0.008、図)。これらの検討項目と酒皶の重症度、サブタイプや罹病期間との有意な相関は認められなかった。
図.眼病変の有無別に見た酒皶患者のhs-CRP値(四分位)
(J Cosmet Dermatol, 11月22日オンライン版)
以上から、Kulaklı氏らは酒皶患者では動脈硬化リスクが上昇しており、酒皶が動脈硬化の独立した危険因子である可能性を指摘。「酒皶患者では心血管疾患合併の可能性を念頭に置いた慎重な観察が必要であり、眼病変を有する症例は特に注意を要する」と結論している。
(編集部)