1月18日、「妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防」を適応として、組み換えRSウイルス(RSV)ワクチン(商品名アブリスボ筋注用)が承認された(関連記事「【速報!】国内初のRSV母子免疫ワクチンが承認」)。同ワクチンは国内初の母子免疫ワクチンで、妊婦に接種することにより出生児から乳児におけるRSVを原因とする下気道疾患を予防する。発売を受け、日本小児科学会は2月17日に、「RSウイルス母子免疫ワクチンに関する考え方」を発表。RSV母子免疫ワクチンの有効性に言及し、「同ワクチンの理解と接種が進むことを期待したい」と述べている。
基礎疾患の有無にかかわらず入院リスクあり、ピークは生後1~2カ月後
RSVは世界中に広く分布するウイルスで、1歳までに50%以上が、2歳までにほぼ100%が感染する。乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%がRSV感染によるもので、生後6カ月未満での感染は重症リスクが高いことが示されている。また、合併症としては無呼吸、急性脳症などがあり、反復性喘鳴(気管支喘息)が後遺症となることがある。
日本では、毎年約12万~14万人の2歳未満児がRSV感染症と診断され、約4分の1(約3万人)が入院を要すると推定されているものの、治療法は確立されていない。基礎疾患の有無にかかわらず入院リスクがあり、月齢別の入院発生数のピークは生後1~2カ月時点のため、生後早期からの予防策が望まれていた。
重症化抑制薬としては、抗RSVヒト化モノクローナル抗体パリビズマブが使用可能だが、対象は基礎疾患を有する/早産児に限られる。そのため、RSV感染症による入院の大部分を占める基礎疾患のない正期産児には使用することができない。
生後90日で80%のRSV関連下気道感染症を抑制
RSV母子免疫ワクチンは、妊婦に接種することで母体のRSVに対する中和抗体価を高め、胎盤を通じた母体から胎児への中和抗体の移行により、RSVを原因とする乳児の下気道疾患を予防する。
同ワクチンの国際共同第Ⅲ相試験において有効性と安全性が示されており、重度のRSV関連下気道感染症に対しては生後90日で81.8%、生後180日で69.4%、医療機関の受診を必要とするRSV関連下気道感染症に対してはそれぞれ57.1%、51.3%の有効性が示された。妊娠28~36週に接種した場合、より有効性が高い傾向が認められた。
これらを総合的に勘案し、同学会は「基礎疾患のない乳児におけるRSV感染症の予防に寄与することが期待される」と結論。その上で「日本の新生児・乳児・幼児のRSV感染症の予防や重症化抑制に関連学会と協働で取り組んでいく」との認識を示している。なお声明では、既に接種が開始されている60歳以上を対象とした組み換えRSVワクチン(商品名アレックスビー筋注用)による接種過誤が起こらないよう注意を喚起している。
(栗原裕美)
修正履歴:アブリスボ筋注は販売準備中ですので、修正いたしました。