米・University of Chicago MedicineのGeorge L. Bakris氏らは、軽度~中等度の高血圧患者を対象に長時間作用型RNA干渉治療薬zilebesiranの有効性と安全性を評価する第Ⅱ相プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)KARDIA-1を実施。その結果、zilebesiranは最長6カ月にわたり有意な降圧効果を発揮し、3カ月または6カ月間隔の皮下投与が有効である可能性が示唆されたとJAMA(2024年2月16日オンライン版)に報告した。(関連記事「RNA干渉の降圧薬、有望な結果」)
3カ月×1パターン、6カ月×3パターンの4レジメン
zilebesiranは、肝におけるアンジオテンシノーゲン合成を阻害することでレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に作用する。軽度〜中等度の高血圧患者を対象とした第Ⅰ相RCTでは、zilebesiranの単回皮下投与により血清アンジオテンシノーゲンと血圧が用量依存的に低下し、作用は6カ月持続した。
KARDIA-1は、zilebesiran投与レジメンの有効性と安全性を評価するため、カナダ、ウクライナ、英国、米国の78施設で2021年7月~23年6月に実施された。
対象は18~75歳の成人で、未治療または2種類までの降圧薬による治療を受けており、降圧薬ウオッシュアウト後の平均収縮期血圧(SBP)が135~160mmHgの高血圧患者。二次性高血圧、起立性低血圧、血清カリウム濃度が5mEq/L(5mmol/L)以上、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2以下、1型糖尿病、コントロール不良の2型糖尿病(HbA1c 9.0%超)、未診断でもスクリーニング時に糖尿病の検査所見(HbA1c 7.0%以上)を呈する者は除外した。
対象を4パターンのzilebesiran皮下投与レジメン(150mg、300mg、600mgを6カ月に1回、300mgを3カ月に1回)またはプラセボ(3カ月に1回)にランダムに割り付け、6カ月間投与した。
主要評価項目は、3カ月時点の24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による平均SBPのベースラインからの変化量〔最小二乗平均値(LSM)〕の群間差とした。副次評価項目として、6カ月時点のABPMによる平均SBPおよび診察室SBPのベースラインからの変化量などを評価。安全性の評価項目は、6カ月時点の有害事象発現率とした。
1回の投与で有意に血圧を低下、6カ月持続
解析対象は、377例(黒人24.7%、女性44.3%、平均年齢57±11歳)。試験レジメンの内訳は、①zilebesiranを6カ月に1回150mg投与する群が78例、②同300mg群が73例、③同600mg群が76例、④同薬を3カ月に1回300mg投与する群が75例、⑤プラセボ群が75例―だった。
3カ月時点のABPMによるSBPのLSMは、6カ月に1回のzilebesiran 150mg群で-7.3mmHg(95%CI -10.3〜-4.4mmHg)、3カ月または6カ月に1回の同300mg投与群で-10.0mmHg(同-12.0〜-7.9 mmHg)、6カ月に1回の同600mg群で-8.9mmHg(同-11.9〜-6.0mmHg)、プラセボ投与で6.8mmHg(同3.6〜9.9mmHg)だった。
プラセボ群とのSBPのLSM差は、6カ月に1回のzilebesiran 150mg群で-14.1mmHg(95%CI -19.2〜-9.0mmHg)、3カ月または6カ月に1回の同300mg群で-16.7mmHg(同-21.2〜-12.3mmHg)、6カ月に1回の同600mg群で-15.7mmHg(同-20.8〜-10.6)といずれも有意な降圧効果が示された(全てP<0.001)。
zilebesiran投与群におけるABPMによるSBPのLSMの有意な低下およびプラセボとの有意なLSM差は6カ月時点でも維持され、zilebesiranによる降圧効果が示された。
有害事象は、6カ月間でzilebesiran群の60.9%、プラセボ群の50.7%に発生し、重篤なものはそれぞれ3.6%、6.7%だった。重篤でない薬物関連有害事象は、zilebesiran群の16.9%に発生し、主に注射部位反応と軽度の高カリウム血症だった。プラセボ群では8.0%だった。
以上を踏まえ、Bakris氏らは「zilebesiranの3カ月または6カ月に1回の投与により、最長6カ月間血圧が有意に低下し、降圧薬として有効である可能性が示唆された」と結論。その上で、「今回の投与期間は6カ月で、それ以上の期間zilebesiranを反復投与した場合に効果が持続するか、また安全性プロファイルに変化が生じるかは不明である」とし、「長期投与効果については、現在進行中のKARDIA-1の延長試験で評価する予定である」と説明している。
(今手麻衣)