焦点発作を有する成人てんかん患者において、新規ピラセタム系抗てんかん薬brivaracetam(BRV)補助療法の有効性がアジア人を対象とした第Ⅲ相二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験EP0083で示された。国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター名誉教授の井上有史氏らが、Epilepsia Open2024年4月4日オンライン版)に報告した(関連記事「てんかん一次治療にぺランパネルが好成績」)。

3群に割り付け焦点発作回数の減少率などを評価

 てんかん患者の約3割は、抗てんかん薬を使用しても発作のコントロールが困難とされ、アンメットニーズが高い。これまで焦点発作例におけるBRV補助療法の有効性や安全性は、第Ⅲ相国際臨床試験および長期追跡調査研究で確立されているものの、アジア人の臨床データは限られている

 そこで今回、井上氏らは日本を含むアジア7カ国・94施設で、1~2種類の抗てんかん薬治療を受けているにもかかわらず焦点発作(焦点起始両側強直間代発作を含む)を有する16~80歳の患者449例を登録。補助療法としてBRV 50mg/日を併用する群、同200mg/日を併用する群、プラセボ群に1:1:1でランダムに割り付け、12週間治療した。

 主要評価項目は28日間の焦点発作回数の減少率、副次評価項目は28日時における焦点発作回数のベースラインからの減少率が50%以上の患者割合(50%反応率)、焦点発作回数の減少率の中央値、治療期間を通じ無発作だった患者の割合とした。また、主要な安全性評価項目は治療関連有害事象(TEAE)の発現率、治験中止に至ったTEAEの発現率、重篤な有害事象(AE)とした。

BRV両群とも有意に発作が減少

 試験薬を1回以上投与された448例の内訳はプラセボ群が149例、BRV 50mg/日併用群が151例、同200mg/日併用群が148例だった。全体の平均年齢は34.5歳、女性は53.8%だった。

 プラセボ群に対する28日間の焦点発作回数の調整後減少率は、BRV 50mg/日群が24.5%、200mg/日群が33.4%と、いずれも有意に減少した(順にP=0.0005、P<0.0001)。

 50%反応率は、プラセボ群の19.0%に対し、BRV 50mg/日群が41.1%、BRV 200mg/日群が49.3%といずれも有意差が認められた(全てP<0.0001)。

 ベースラインと比べた焦点発作回数の減少率の中央値は、プラセボ群が21.3%、BRV 50mgが38.9%、BRV 200mg/日群が46.7%と有意に多かった(順にP=0.0011、P=0.0001)。同様に治療期間を通じ無発作だった患者はそれぞれ0%、4.6%(7例)、6.8%(10例)と、BRV両群で有意に多かった(順に0.0146、P=0.0017)。

有効性、安全性とも非アジア人の既報と一致

 TEAEの発現率は、プラセボ群が58.4%、BRV 50mg/日群が57.0%、BRV 200mg/日群が60.1%、治験中止に至ったTEAEの発現率はそれぞれ4.7%、2.6%、3.4%であり、いずれもプラセボ群とBRV両群で同程度だった。薬剤関連のAEは20.1%、26.5%、39.9%に認められた。

 主な有害事象は傾眠、浮動性めまい頭痛、上気道感染、鼻咽頭炎で、予期せぬ安全性シグナルの報告はなかった。レベチラセタムやその他の一般的な抗てんかん薬使用の有無で層別化したサブグループ解析でも、主解析と同様の結果が得られた。

 井上氏らは、EP0083試験の結果が非アジア人を対象とした既報における有効性および安全性プロファイルとおおむね一致していたことを指摘。その上で「BRV補助療法は、焦点発作を有するアジア人てんかん患者における有効性、安全性、忍容性が良好だった」と結論している。

 なお、BRVは同試験の結果に基づき昨年(2023年)7月に「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)」を適応症として国内で承認申請されている。

(小路浩史)