アトピー性皮膚炎は成人において心血管疾患と関連することが示されているが、小児のデータはほとんどない。そこで米・Columbia University Irving Medical CenterのChloe Kern氏らは、両者の関連を検討するシステマチックレビューとメタ解析を実施。小児ではアトピー性皮膚炎虚血性心疾患との関連が見られたものの、心血管リスクは小さいことが示唆されたJ Invest Dermatol2024; 144: 1038-1047.e16)に発表した。(関連記事:「小児のアトピー+αで記憶障害リスク」)

BMIとの関連以外は限定的

 若年性炎症性関節炎、小児全身性エリテマトーデスなどの慢性炎症性疾患は心血管リスクを上昇させる重要な危険因子として知られている(Rheumatol Int 2017; 37: 137-142Curr Rheumatol Rep 2020; 22: 21)。米国心臓協会は、このような疾患がある子供に対し集中的なスクリーニングと厳格な治療目標設定を行うことを推奨している(Circulation 2019; 139: e603-e634)。

 同じ慢性炎症性疾患であるアトピー性皮膚炎について、成人患者で心血管リスクの上昇と関連することが報告されているJ Allergy Clin Immunol 2019; 143: 1821-1829)。一方、小児においては体重過多または肥満だとアトピー性皮膚炎のリスクが上昇するなど(J Am Acad Dermatol 2015; 72: 606-16.e4)、BMIとの関連性が示されているものの、他の心血管危険因子に関するデータは限定的である。

 そこでKern氏らは、18歳未満の患児におけるアトピー性皮膚炎の心血管危険因子や転帰との関連を明らかにする目的で今回の研究を実施した。

虚血性心疾患以外との関連は見られず

 Kern氏らはPubMed、Web of Science、EMBASE、CINAHLから、2022年7月17日までに収載された関連論文を検索。適格基準(①観察研究、②曝露要因がアトピー性皮膚炎、③18歳未満が対象、④評価項目に心血管危険因子を含む)を満たした10件・57万7,148例を解析対象とした。

 検討の結果、アトピー性皮膚炎虚血性心疾患との関連が示された〔研究数3件、オッズ比(OR)1.68、95%CI 1.29〜2.19〕。糖尿病との関連も見られたが(同4件、1.31、1.12〜1.53)、潜在的な交絡因子を調整した研究に限定すると関連は消失した(同2件、0.98、0.35〜2.75)。脂質異常症は一次解析でリスクの上昇が示されたものの、全体では関連が見られなかった〔同7件、1.24、1.13〜1.36、95%予測区間(PI)0.95〜1.61〕。

 高血圧(研究数5件、OR 1.15、95%CI 0.98〜1.34)、脳卒中(同2件、1.24、0.94〜1.62)との関連はなかった。

過度の心配は不要か

 以上から、Kern氏らは「本研究において、アトピー性皮膚炎患児の心血管リスクは小さいことが分かった。虚血性心疾患との関連は認められたものの、糖尿病高血圧、脂質異常症、脳卒中との関連については強固または一貫したエビデンスは示されなかった」と結論。

 一方で、今回の解析対象はアトピー性皮膚炎の重症度や重要な交絡因子(肥満度など)に関する詳細な情報が不足していた点を指摘。より確実性の高いエビデンスを導くためには、さらなる検討が必要であると述べている。

 なお研究の限界として、研究集団間での異質性の高さやアトピー性皮膚炎の定義の非一貫性、転帰のばらつきなどを挙げている。

(編集部)