境界明瞭でピンク、赤、紫の濃淡がワインをこぼしたように見えることからポートワイン母斑ともいわれる単純性血管腫は、出生時に生じ自然退縮することはなく、レーザー治療が行われている。そのため、治療の転帰はQOLに強く関連する。レーザー治療の間隔を短縮するのが有効な可能性が示唆されるが、最適な治療間隔は明確でない。米・Laser & Skin Surgery Center of New YorkのShirin Bajaj氏らは、単純性血管腫の乳児に対する週1回のパルス色素レーザー(PDL)治療の成績をJAMA Dermatol2024: e240293)に報告。乳児期の早期施行により全快レベルの治療効果が得られたという。

治療間隔の短縮および乳児期の早期介入の有効性を検討

 単純性血管腫は未治療の場合、より特徴的な肥厚性病変へと進展し、小児期および成人期における多大な心理社会的障害と関連する。PDL治療がゴールドスタンダードだが、最適な治療間隔は確立されておらず、肥厚した病変などでは治療効果が薄い。そうした中、治療間隔の短縮がより効果的であり、治療期間全体を短縮できる可能性を示唆する報告がある。

 Bajaj氏らは、PDL治療効果の障壁となるPDL誘発血管新生遺伝子の転写レベルの増加はPDL治療後3〜7日でピークに達することや(Br J Dermatol 2015; 172: 669-676)、生後数カ月の乳児では治療関連の色素沈着を発症する可能性が低いことから、自施設における乳児期の単純性血管腫に対する週1回のPDL治療の転帰を後ろ向きに検討した。

週1回のPDL治療、全快達成までの治療回数は8回

 対象は、2022年1月1日〜23年12月31日に週1回PDL治療を受けた生後6カ月未満の単純性血管腫10例〔男児6例、初回治療時の年齢中央値4週(範囲1〜20週)〕。症例写真により治療後の改善率を皮膚科医2人が6段階(0%:改善なし、1〜25%:軽度改善、26〜50%:中等度改善、51〜75%:著明な改善、76〜95%:ほぼ全快、96〜100%:全快)で独立して評価した。PDL治療にはCANDELA社のVBeam Primaを用い、スポット径13mm、フルエンス6.5〜8J/cm2、パルス幅1.5msで照射した。

 検討の結果、治療期間の中央値は2カ月(範囲0.2〜5.1カ月)で、7例(70%)が2カ月後にほぼ全快または全快していた。他の3例はいずれも著明な改善を示し、その後、追加治療によりほぼ全快した。ほぼ全快または全快の達成までの治療回数は8回(範囲2〜20回)で、色素変化、瘢痕形成、熱傷、びらん、感染などの有害事象は認められなかった。

 以上から、Bajaj氏らは「単純性血管腫に対するPDL治療による早期介入は、患者を心理社会的スティグマから解放し人生を変える可能性がある。今回の検討は症例報告という限界があるものの、生後6カ月未満の単純性血管腫に対する週1回のPDL治療によりほぼ全快または全快に至り、報告されている有害事象は認められなかった。乳児では治療関連紫斑などを発症するリスクがほとんどないことから忍容性が高く、治療成績の改善と全治療期間の短縮に寄与することが示唆される。治療間隔を1週間に短縮するという新しい治療法の有益性について、さらなる研究が必要だ」と述べている。

編集部