レストレスレッグス(むずむず脚)症候群(RLS)は、下肢の不快感と睡眠障害を主徴とし、患者の苦痛が大きい。神経障害を有する点でうつ病との関連が指摘されているが、客観的データに基づく研究はなされていない。滋賀医科大学医学部5年生の宮口凜氏らは、世界で初めてRLS患者における抑うつ状態の有病率に関するシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。約30%の患者がうつ病または抑うつ状態を合併していることが分かったと、Sleep Med Rev2024; 77: 101975)に発表した。(関連記事「レストレスレッグス症候群で自殺リスク3倍」)

既報でのうつ合併率は18~71%

 RLSは小児から高齢者まで幅広く見られ、有病率はアジアで1~3%、欧米で5~13%と推定され、男性に比べ女性は約2倍と高い。症状は安静時に出現し、下肢を動かすことで緩和されるが、夕方から夜間にかけて悪化する傾向にあり、睡眠障害を伴う患者が多いのが特徴。自殺や自傷行為の危険因子である可能性も示唆されている。

 また、視床下部や線条体など病態に関与する神経系が共通していることから、うつ病との関連が指摘されている。うつ病の有病率は世界で約5%と推定され、RLS患者におけるうつ病または抑うつ状態の合併率は18~71%との報告がある。

 そこで宮口氏らは、オンライン医学データベース(MEDLINE、CENTRAL、EMBASE、ClinicalTrials.gov)に2022年11月20日までに収蔵された研究のシステマチックレビューを実施。ランダム効果モデルを用い、RLS患者におけるうつ病または抑うつ状態の合併率についてメタ解析を行った。

 RLSの診断は国際RLS研究グループ(IRLSSG)がまとめた2014年版の基準①下肢を動かしたいという衝動、②安静時に症状が出現または悪化、③運動による改善、④夜に症状が出現または悪化、⑤症状が筋肉痛、静脈うっ血、下肢浮腫、関節炎、こむら返り、特定の体位における不快感、フットタッピングなど類似疾患に起因するものを鑑別除外-に基づいて行った。

RLS患者には定期的なうつ病のスクリーニングが必要

 対象となった研究は24件・2,039例(平均年齢50.8±14.8歳、男性727例)。解析の結果、RLS患者におけるうつ病または抑うつ状態の合併率は30.39%(95%CI 20.55~42.43%)と推定された()。

図.RLS患者におけるうつ病または抑うつ状態の合併率

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(滋賀医科大学プレスリリースより)

 なお、RLS患者におけるうつ病の合併率や重症度に関連する因子は特定されなかった。

 以上の結果から、宮口氏らは「RLS患者では3人に1人という高い確率でうつ病または抑うつ状態を合併していることが初めて分かった。RLS患者に対し、定期的なうつ病スクリーニングを行う必要がある」と結論。その上で「RLSに併発する睡眠障害の影響やうつ病と共通するドパミン神経系の異常が背景となっている可能性がある」と考察し、今後は「RLS患者が抑うつ状態を合併するプロセス、適切な治療法の検討が必要」と付言している。

(小暮秀和)