水疱性類天疱瘡(BP)は、高齢者に多く見られる自己免疫性の皮膚疾患で、痒みを伴う発疹や水疱が発生する。難治性のケースも見られ、重症化すると死に至ることもある。近年、BPとアトピー性皮膚炎(AD)の関連性が強く示唆されていることから、中国・Chongqing Clinical Research Center for DermatologyのQing Wang氏らは、フィンランド遺伝子研究プログラムFinnGen研究データベースと英国のUKBiobankのデータを用いて解析を行い、両疾患に遺伝的関連を認めたことをMol Genet Genomic Med(2024;12: e70022)に報告した(関連記事「自己免疫疾患とアレルギーに共通の特徴」)。
遺伝的関連性を4つの手法(LDSC、CPASSOC、TWAS、双方向MR)で解析
BPとADには2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)優位な免疫応答を示し、血清IgE濃度が高いという共通点がある。また、BPでは細胞接着分子関連蛋白のBP180に関連する抗BP180抗体が陽性を示すが、実験的に作製したBP180機能不全マウスはADに似た皮膚炎を発症することが報告されている(Proc Natl Acad Sci USA 2018; 115: 6434-6439)。しかし、両疾患の併存関係についての研究は進んでいない。
そこでWang氏らは4つの手法を用いて、BPとADの遺伝的関連性の解析を行った。4つの手法とは、①連鎖不平衡スコア回帰(LDSC):ゲノムワイド関連研究(GWAS)のサマリーデータを用いて遺伝的相関(rg)を推定、②交差表現型関連解析(CPASSOC):BPとADに共通する疾患関連一塩基多型(SNP)を同定、③トランスクリプトームワイド関連解析(TWAS):両疾患に共通する関連遺伝子を特定、④双方向メンデルランダム化(MR)解析:両疾患の因果関係を検証−する方法である。
遺伝的な正相関、4つの共通SNPと59の共通遺伝子、BPがADリスクを高める
①LDSC解析ではFinnGenから取得したBP患者507例と対照37万5,767例のデータおよび、UKBiobankからのAD患者2万2,474例と対照77万4,187例のデータを用いて両疾患の遺伝的相関を検討した。その結果、2つの疾患には正の相関が認められた(rg = 0.5476、P = 0.0495)。
次に②CPASSOCによる解析で、BPとADで共通する4つの多面的SNP(rs7746553、rs943451、rs968155、rs28383305)を同定した。いずれのSNPもBPやADとの関連が報告されたのは今回の研究が初めてである。
CPASSOCが遺伝子発現を考慮しない解析法であるのに対し、③TWASは遺伝子発現量を予測することで疾患に関与する遺伝子を同定する方法である。TWAS解析の結果、BPとADに共通する59の遺伝子が同定された。さらにこれらの遺伝子の多くは、単純ヘルペスウイルス1感染とユビキチンを介した蛋白質質分解に関与することが分かった。前者はADに併発しやすく皮膚症状を重症化させることが知られており、後者は免疫応答や炎症反応に関与することから皮膚疾患での役割が注目されている。
最後の④双方向MR解析では曝露因子としてのBPがADのリスクを高めることが示された(OR 1.04 95%CI1.018〜1.068)。しかし意外にも、曝露因子としてのADにBP発症との関連は認められなかった。
以上の結果から、Wang氏らは「BPとADには強い遺伝的関連があり、共通の遺伝的基盤が存在することが示された。今回の知見、特に共通するSNPの発見は両疾患において新たな治療法の開発に寄与する可能性がある」としている。
(編集部)