長崎市の朝長万左男さん(81)は半世紀以上、被爆者医療に携わってきた。幼少期、自らも被爆した医師はノーベル平和賞授賞式翌日の11日、ノルウェーの首都オスロで開かれる平和賞フォーラムで訴える。生涯続く身体への影響こそ、核の非人道性の表れだ―
 朝長さんは2歳の時、爆心地から約2.7キロの長崎市中町の自宅で被爆した。家屋は半壊したが、けがはしなかった。
 医師を目指すようになったのは、高校生の頃。同世代の被爆者が相次いで白血病を発症し、「被爆への不安と学問的興味」を抱いた。1968年に血液内科医となり、以来、白血病を専門に多くの被爆者を診てきた。
 被爆から時を経て発症する患者は少なくなかった。治療に当たる一方、原爆による放射線の影響を研究。放射線が被爆者の生涯にわたって悪影響を及ぼし、白血病やがんなどを発症させていることを解き明かした。「人体への影響はとんでもなく、被爆者は精神的な不安も抱えている。核の非人道性の直接的な証明だ」と強調する。
 今年8月末ごろ、ノーベル賞委員会から、核兵器に関する平和賞フォーラムに「被爆者と研究者の代表として登壇してほしい」とのメールが届いた。10月、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)への平和賞授賞決定が発表され、「核を取り巻く状況は厳しく、被爆者の声が必要とされた」と受け止めた。
 長崎県被爆者手帳友の会会長も務め、昨年は米国で計21回講話し、延べ約1000人の市民と語り合った。「被爆者は最後の一踏ん張りをしなくてはいけない。今後も核兵器国に行き、世界中の市民と連帯していく」と力を込める。オスロでは、「世界を変えることができる」との確信を胸に、被爆者を一生さいなむ核の非人道性を訴えてくる。 (C)時事通信社