治療・予防

便失禁治療に広がる選択肢
1人で悩まず受診を

 自分の意思に反して、または無意識に便が漏れてしまう「便失禁」と呼ばれる症状を持つ人は、日本で500万人以上と推計されている。多くの人が誰にも相談できず、治療を受けていない。しかし、2014年に電気刺激で症状改善を目指す治療法が登場し、高い有効性が報告されている。17年には便失禁診療の普及などを目指し、国内初のガイドラインも作られた。ガイドラインの作成委員を務めた自治医科大学(栃木県下野市)医学部外科学講座消化器外科学部門の味村俊樹教授は「勇気を出して診察を受けてほしい」と語る。

仙骨神経刺激療法(SNM)

 ▽加齢や出産時の傷が原因

 09年に行われた実態調査によると、便失禁で受診した約300人の患者の多くが60~70歳代を中心とする高齢女性だったが、30歳代の女性も認められた。起こりやすさは男女同等とされるが、受診するのは女性の方が多いようだ。

 便失禁のタイプには〔1〕便意がなく気が付かないうちに少量漏れてしまう漏出性便失禁〔2〕便意は感じるがトイレまで我慢できず漏れてしまう切迫性便失禁〔3〕漏出性と切迫性を両方有する混合型―の三つがあるが、調査では漏出性がほぼ半数を占めた。

 便失禁は、肛門を締める筋肉である肛門括約筋の機能が加齢により低下することや、出産時に肛門括約筋や関連する神経が傷つくことが発症原因になる場合が多い。30歳代女性の便失禁は、主に出産時のダメージによるものだ。直腸がんや痔(じ)の手術後、腸が過敏になり下痢を繰り返す過敏性腸症候群や下剤の飲み過ぎなどで起こることもある。

 ▽新治療法で8割が改善

 味村教授によると、治療ではまず、排便習慣の指導や、便中の水分を吸収する薬または下痢止めを使った薬物療法を行う。下剤の飲み過ぎの場合は、用量を調整する。

 こうした治療で改善しない場合は、より専門的な治療となる肛門括約筋の強化訓練、洗腸療法などが選択される。それでも良くならないと、電気刺激を使った仙骨神経刺激療法(SNM)や肛門括約筋の手術といった外科的治療を考慮する。

 14年に保険適用となったSNMは、臀部(でんぶ)の皮下に横幅5センチ程度の装置を埋め込み、骨盤にあって排便を調整している仙骨神経を電気で刺激し、排便機能の改善を目指す治療法だ。治療を受けた人の86%で、便失禁の頻度が半分以下に減少した。味村教授は「治療法は進歩しています。独りで悩まず受診してほしい」と呼び掛ける。SNMを行っている主な医療機関は、便失禁の情報サイト「おしりの健康.jp」で紹介されている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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