失禁
失禁(しっきん)とは、本人が予期できずに尿や便を漏らすことをいいます。失禁に伴う問題は深刻で、本人の心理的な葛藤(かっとう)、自尊感情の低下、介護者の疲労、経済的負担など多様です。
■失禁の原因
原因は必ずしも1つに限定できませんが、尿道を締める筋肉(膀胱括約〈ぼうこうかつやく〉筋)や、肛門を締める筋肉(肛門括約筋)が弱くなる、尿や便が出る感じがわからない、尿や便が出ることをうったえられない、膀胱の容量が小さくなる、尿および便が全部出きらないで残尿や残便が起こる、トイレの場所がわからない、トイレまで行くことができない、下着がおろせない、というように排泄(はいせつ)行動ができないことです。
また1~2回の失禁で、紙パンツ(おむつ)を当て、トイレに行くために排泄をがまんする必要がなくなってしまうと、そのことをきっかけに尿意・便意が失われて失禁状態が続くこともあります。
■失禁状態の把握
失禁をした時間と、本人が紙パンツ(おむつ)がぬれていることがわかるかどうか、を記録します。失禁の原因や、どの時間帯に紙パンツを交換するか、紙パンツをやめることが可能かどうかの判断資料となります。少なくとも状況がつかめるまで1週間くらいは記録します。
ぬれていることがわかる、あるいは出る前に知らせることができる場合は、紙パンツをやめて尿とりパットに変えたり、トイレやポータブルトイレを使ったりする方法に変えることも可能です。努力と根気が必要ですが、本人と介護者が納得できる方法を考えていきます。
■失禁のケア
排泄のペースをつかみ、適切な時間に排尿・排便をうながします。特に排便は「座って排泄する」と腹圧もかけやすく、残便が少なくなります。トイレまでの移動に時間がかかる場合は、距離を短くするために、ポータブルトイレを使ってみることも方法の一つです。
現実的には、紙パンツ(おむつ)が必要な場合が多いです。失禁は、病気・老化に伴う症状の一つと受けとめ、紙パンツ(おむつ)は下着の一部だと考えます。紙パンツ(おむつ)をはいているからトイレに行かなくてよいと考えるのではなく、できるだけトイレ(あるいはポータブルトイレ)で排泄できるようにします。紙パンツ(おむつ)は、トイレまで間に合わないことがあっても、布の下着と違い衣服が汚れずにすむと考えることができます。
最近は、さまざまな紙パンツが市販されています。失禁の程度、動ける程度、性別、寝たきり状態の場合、介護の状況によっても使う紙パンツ(おむつ)は異なります。値段もさまざまありますので、ぜひ、おむつの種類を比較し検討してください。
□基本的な紙パンツ(おむつ)の選択
・量が少なく、歩ける場合…股間部にフィット感があり、吸収性のよい紙パンツが適しています。
・まひや意識障害があり、自分で腰を上げたりできない場合…横もれ防止ギャザーがついた平型で、前でテープでとめる型が適しています。その場合、単純な尿とりパッドと併用します。
紙パンツあるいはカバーは大きすぎず(余裕がありすぎると漏れてしまう)、また腹部をきつく締めすぎないものを選びます。
□手軽に交換する工夫
平型のパッドを股間に当てます。前あき、うしろあき型パンツカバーを使うと、立ったまま替えられますし、男性は尿器も使いやすいです。
尿失禁や便失禁の場合に、紙パンツ全部を替えず、汚れた部分だけを替える工夫もあります。男性の場合は、尿取りパッドや平型の紙おむつを切ってペニスを包みます。
便が少量ずつ出る場合は、肛門部にだけ、紙おむつや古くなったシャツなどを切って当てます。皮膚がただれたりかゆみがないかなどを確認しながらおこないましょう。また、続く場合は、訪問看護師や医師とともに原因を考えることも大切です。
□においを少なくする工夫
においを消す活性炭入りの紙おむつや横シーツを利用します。
■紙パンツ(おむつ)の交換と陰部のケア
便の皮膚への刺激によって、肛門周囲に皮膚の炎症が起こります。特に下痢や直腸内に便が残っていて少量ずつ常に出ている場合は、便に含まれるたんぱく質分解成分によって、接触している皮膚のただれが起こりやすくなります。
古い木綿のシャツなどを適当な大きさに切って箱などに準備しておき、紙パンツ(おむつ)交換のとき、お湯でぬらして、使い捨てタオルとして使用します。
使い終わった食器洗い洗剤の容器にぬるま湯を入れ、汚れた部分を洗い流す方法も皮膚の清潔が保てます。
汚れを落とし、炎症を起こしやすい部分にベビーオイルなどを塗布し、皮膚への便の刺激を遮断します。びらんを起こしている場合は、医師と相談し、消炎作用のある油性の軟膏(なんこう)を塗布します。
(執筆・監修:東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 看護科学域 准教授 竹森 志穂)
■失禁の原因
原因は必ずしも1つに限定できませんが、尿道を締める筋肉(膀胱括約〈ぼうこうかつやく〉筋)や、肛門を締める筋肉(肛門括約筋)が弱くなる、尿や便が出る感じがわからない、尿や便が出ることをうったえられない、膀胱の容量が小さくなる、尿および便が全部出きらないで残尿や残便が起こる、トイレの場所がわからない、トイレまで行くことができない、下着がおろせない、というように排泄(はいせつ)行動ができないことです。
また1~2回の失禁で、紙パンツ(おむつ)を当て、トイレに行くために排泄をがまんする必要がなくなってしまうと、そのことをきっかけに尿意・便意が失われて失禁状態が続くこともあります。
■失禁状態の把握
失禁をした時間と、本人が紙パンツ(おむつ)がぬれていることがわかるかどうか、を記録します。失禁の原因や、どの時間帯に紙パンツを交換するか、紙パンツをやめることが可能かどうかの判断資料となります。少なくとも状況がつかめるまで1週間くらいは記録します。
ぬれていることがわかる、あるいは出る前に知らせることができる場合は、紙パンツをやめて尿とりパットに変えたり、トイレやポータブルトイレを使ったりする方法に変えることも可能です。努力と根気が必要ですが、本人と介護者が納得できる方法を考えていきます。
■失禁のケア
排泄のペースをつかみ、適切な時間に排尿・排便をうながします。特に排便は「座って排泄する」と腹圧もかけやすく、残便が少なくなります。トイレまでの移動に時間がかかる場合は、距離を短くするために、ポータブルトイレを使ってみることも方法の一つです。
現実的には、紙パンツ(おむつ)が必要な場合が多いです。失禁は、病気・老化に伴う症状の一つと受けとめ、紙パンツ(おむつ)は下着の一部だと考えます。紙パンツ(おむつ)をはいているからトイレに行かなくてよいと考えるのではなく、できるだけトイレ(あるいはポータブルトイレ)で排泄できるようにします。紙パンツ(おむつ)は、トイレまで間に合わないことがあっても、布の下着と違い衣服が汚れずにすむと考えることができます。
最近は、さまざまな紙パンツが市販されています。失禁の程度、動ける程度、性別、寝たきり状態の場合、介護の状況によっても使う紙パンツ(おむつ)は異なります。値段もさまざまありますので、ぜひ、おむつの種類を比較し検討してください。
□基本的な紙パンツ(おむつ)の選択
・量が少なく、歩ける場合…股間部にフィット感があり、吸収性のよい紙パンツが適しています。
・まひや意識障害があり、自分で腰を上げたりできない場合…横もれ防止ギャザーがついた平型で、前でテープでとめる型が適しています。その場合、単純な尿とりパッドと併用します。
紙パンツあるいはカバーは大きすぎず(余裕がありすぎると漏れてしまう)、また腹部をきつく締めすぎないものを選びます。
□手軽に交換する工夫
平型のパッドを股間に当てます。前あき、うしろあき型パンツカバーを使うと、立ったまま替えられますし、男性は尿器も使いやすいです。
尿失禁や便失禁の場合に、紙パンツ全部を替えず、汚れた部分だけを替える工夫もあります。男性の場合は、尿取りパッドや平型の紙おむつを切ってペニスを包みます。
便が少量ずつ出る場合は、肛門部にだけ、紙おむつや古くなったシャツなどを切って当てます。皮膚がただれたりかゆみがないかなどを確認しながらおこないましょう。また、続く場合は、訪問看護師や医師とともに原因を考えることも大切です。
□においを少なくする工夫
においを消す活性炭入りの紙おむつや横シーツを利用します。
■紙パンツ(おむつ)の交換と陰部のケア
便の皮膚への刺激によって、肛門周囲に皮膚の炎症が起こります。特に下痢や直腸内に便が残っていて少量ずつ常に出ている場合は、便に含まれるたんぱく質分解成分によって、接触している皮膚のただれが起こりやすくなります。
古い木綿のシャツなどを適当な大きさに切って箱などに準備しておき、紙パンツ(おむつ)交換のとき、お湯でぬらして、使い捨てタオルとして使用します。
使い終わった食器洗い洗剤の容器にぬるま湯を入れ、汚れた部分を洗い流す方法も皮膚の清潔が保てます。
汚れを落とし、炎症を起こしやすい部分にベビーオイルなどを塗布し、皮膚への便の刺激を遮断します。びらんを起こしている場合は、医師と相談し、消炎作用のある油性の軟膏(なんこう)を塗布します。
(執筆・監修:東京都立大学大学院 人間健康科学研究科 看護科学域 准教授 竹森 志穂)