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血圧の目標値、より厳しく
新ガイドラインをどう読むか

東京慈恵会医科大学付属病院の坂本昌也准教授

東京慈恵会医科大学付属病院の坂本昌也准教授

 ◇血糖値と共通点

 同じような治療プロセスを経る生活習慣病に、肥満などの影響で血糖を制御するホルモンのインスリンの効き目が緩慢に低下する「2型糖尿病」がある。この病気と診断された患者に対しては、まず運動の励行や食生活の改善などの非薬物療法を実施する。それでも血糖値が上昇した段階で血糖値を下げる薬を処方されるようになる。

 「血糖値は夏に下がり、冬に上昇する傾向にあるし、日常の活動量や食生活の変化など生活環境の影響を受けやすい。その影響に配慮した上で、数値を評価する必要がある。この意味で数値は単独ではなく、継続的に測定し、その変化と傾向を追わなければならない」

 血糖値の季節変動と糖尿病のさまざまな合併症との相関について研究している東京慈恵会医科大学付属病院糖尿病・代謝・内分泌内科の坂本昌也准教授は、数値を扱う難しさをこう説明する。高血糖による動脈硬化が引き起こす心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げるだけでなく、動脈硬化が慢性化することで生じる腎臓などの障害を少しでも軽減するために、一定値以下の安定した血糖値を目指す必要があるからだ。

 継続する動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らし、緩慢に進行する腎臓などの臓器障害をコントロールする。この治療目的は高血圧の治療でも同じだ。苅尾教授も健康診断などで高血圧となる数値測定結果が出た場合は、数日間、家庭でも毎日起床後、就寝前に血圧を測定。高い値が続くようならかかりつけ医や近所の内科医を受診して、相談するようアドバイスする。

小まめに血圧を測る

小まめに血圧を測る

 ◇継続して血圧値を測る

 「ある瞬間の数値で判断するのではなく、日常生活の中での血圧の傾向を把握することが大切だ。高値血圧状態と判断されたら、食事の塩分を減らしたり、軽い有酸素運動に取り組んだりするなどの非薬物療法を開始する。このような取り組みを3~6カ月続けても血圧が下がらない場合に、初めて降圧剤の服用を始める」。同教授が提唱する早期治療の基本セオリーだ。

 その上で「現在投薬治療を受けている人が一足飛びに正常血圧を目指すのは、低血圧状態に陥る危険があるので危険だ。血圧の変化を追わずに漫然と薬物治療を続けるのも問題だが、毎回の測定に一喜一憂して薬やサプリメントなどに飛び付くのはもっと危ない。家庭や職場で定期的に血圧を正確に測定して、自分の血圧をよりトータルに知ってもらうことが何より大切だ」と強調する。

 用語説明 高血圧症
 一定以上の値の血圧が続いた場合、動脈硬化などを引き起こし、心筋梗塞や脳卒中といった致命的な突発的症状を誘発したり、腎臓や胆のう内の細い血管を傷つけたりするなど、臓器の機能低下を生じさせてしまう。これを予防するため、一定値以上の血圧が持続する人を高血圧症と診断。診断された場合の多くは、血圧を下げる降圧剤の処方を受けている。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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