医学の窓辺

2019 AOFOG Y.S. Chang Award受賞
名古屋市立大学大学院・杉浦和子講師 経口避妊薬に関連した血栓塞栓症の発症率と予後
日本人の年齢別発症率の差異について

 Y. S Chang Endowment Awardに、名古屋市立大学看護学研究科の杉浦和子講師の原著論文「The incidence and prognosis of thromboembolism associated with oral contraceptives: Age-dependent difference in Japanese population(経口避妊薬に関連した血栓塞栓症の発症率と予後:日本人の年齢別発症率の差異について)」が最優秀論文賞に選ばれました。表彰式は、2019 AOFOG(第26回アジアオセアニア産科婦人科学会議)会期中の令和元年11月12日にフィリピンの首都マニラの国際会議センターで行われました。

 Y. S Chang Endowment Awardは、2017年から2018年までの2年間において、The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research誌(ジャーナル オブ オブステトリックス アンド ガイネコロジー リサーチ)に掲載された論文のうち、Reproductive Endocrinology & Infertility(生殖内分泌・不妊不育症)分野の優秀論文が選ばれ、その中の最も高評価の著者に授与されます。

 この論文は、月経困難症、子宮内膜症、避妊、月経周期変更などに使用されている女性ホルモン剤の使用中(服用中)における血栓塞栓症(動脈および静脈血栓塞栓症)について、年齢別発症数とその予後について分析したものです。主な研究結果は、日本人女性において次の3点が明らかになりました。第一に年齢の増加とともに静脈血栓塞栓症の占める割合が減少し、動脈血栓塞栓症の占める割合が有意に増加する傾向がみられたこと、第二に血栓塞栓症別では、合併例を含むすべての動脈血栓塞栓症はすべての静脈血栓塞栓症に比し有意に予後不良が多かったこと、第三に年齢別の予後では、後遺症あり・未回復は30歳代・40歳代に多く、死亡は20歳代・30歳代で多かったものの、これら予後不良群と予後良好群との間には有意差はみられなかったことです。

 この論文結果から、女性ホルモン剤使用者では、発症頻度は少ないものの、どの年齢においても血栓塞栓症のリスクがあることが示されました。これらのことより、医療者側(処方する側)も患者側(服用する側)も、より安全・安心な女性ホルモン剤使用に心がけることが重要と考え、さらなる啓発活動により、ウィメンズヘルスケアの発展に期待できます。

                    〔企画制作・時事通信社総合メディア局〕

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