Dr.純子のメディカルサロン

「冬季うつ」とは
~暮れからお正月の憂鬱対策~ 第42回

 日が暮れるのが次第に早くなってくる晩秋から冬にかけ、だるくて気分が落ち込むという悩みを相談されることがあります。

 冬に特有な「冬季うつ」と呼ばれる症状かもしれません。あなたはこんな悩み、ありませんか。


 ◇冬になると意欲消失

 Aさんは毎年、クリスマスの頃から、仕事の意欲が消失気味で困るといいます。

冬の夕暮れの東京都内と東京タワー【時事通信社】(写真はイメージです)

冬の夕暮れの東京都内と東京タワー【時事通信社】(写真はイメージです)

 朝、眠くて起きられない、化粧をする意欲が湧かない、何となくだるい、という状態ですが、毎日、何とか頑張って起きて、仕事場に向かいます。

 経理業務でデスクワーク。1日中、パソコン作業で座りっ放しです。

 仕事が終わると、疲れ切って、帰りにコンビニでチョコレート、アイスクリームにコーヒーを買い込んで、ほっと一息つくのですが、甘い物の食べ過ぎで、体重が増え、憂鬱(ゆううつ)な気分になるといいます。

 クリスマスのイルミネーションが華やかなだけに、この時期、何の予定もない自分が何となく惨めな気分になり、うつが続きます。

 ◇女性の方が高い罹患率

 冬に多い、こうした症状は「冬季うつ」と呼ばれる疾患のことがあります。

 季節性情動障害は、日照時間が短くなると症状が発現しますが、その原因ははっきりとはしていません。

 ただ、神経伝達物質のセロトニンが減少することや、体内時計をつかさどるメラトニンの分泌状態が変化することが影響するのではないかといわれています。

 抑うつ感やだるさ、過眠、甘い物や炭水化物の過食などが症状として起こりやすく、男性より女性の方が罹患(りかん)率が高いとされています。

 Aさんも毎年、晩秋から症状が起こるということで受診し、季節性情動障害の可能性が高いと診断されました。

 だるくて全く動けない、仕事に行けない、という場合は、受診して相談してください。

 ◇気分が落ち込みがちなら

 ただ、そこまでひどい症状ではなくても、毎年、冬場は調子がいまひとつ、という人は結構、多いといえます。そうした人は、こんな対策をしてみてはいかがでしょう。

 (1)朝日に当たる

 朝、日光に当たると、14~16時間後にメラトニンが分泌されて、自然に眠りに入りやすくなります。日照時間が減少するこの季節だからこそ、朝、窓を開け、日に当たる時間をつくると、夜の睡眠がスムーズで、体のリズムを保ちやすくなります。

 また、この11月に行われた日本ポジティブサイコロジー医学会で、朝、窓を開けて日に当たり、深呼吸をすると、その後、気分がいい覚醒状態に入れるという発表がありました。

 (2)天気がいい日は外へ

 天気がいい日中、外に出て、日に当たる時間をつくることも大事です.日に当たることで、体内のセロトニンが分泌されやすくなります。

 (3)体を動かす習慣を

 体を動かすことは、気分をうつから守る大事なポイントです。身体が疲労しているときは、休息が大事ですが、身体を使っていないのに、だるくて疲労感を感じる場合は、体を動かすと、気分が動きます。

 晴れた日は外を歩く、天気が悪い日は室内でストレッチをするなど、体を動かすメニューをつくっておくといいでしょう。

 (4)バランスの良い食事

 甘い物やパン、パスタなどを食べる機会が多い人は、食事を見直してください。バランスを整えることが必要です。

 食べる順番を決め、まず最初にサラダや酢の物などの前菜を食べ、次に魚や肉などのたんぱく質を取り、最後にパンやパスタなどの炭水化物にすると、過食を防止できます。

 また、食後にカモマイルのハーブティーなどを飲むと、気分が落ち着きます。気分をすっきりしたいときは、ミントのハーブティーも効果的です。

 仕事の帰りに、つい甘い物を買い込んでしまう習慣をなくすことも必要です。でも、何より大事なのは「おいしいな」と満足できる食事をすることです。そうすると、過食に走りにくくなります。

 (5)自分を元気にする時間を

 年末は、家族連れやカップルが街に多くなり、一人暮らしの人にとっては、寂しい気分になりやすいといえます。そんな時期だからこそ、自分をいたわるひと時をつくることも大事です。

 気持ちが「ほっ」とできる友達との時間、「ほっ」とできる場所を見付けておくことも大事といえるでしょう。

(文 海原純子)



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