医療ADR

「医療は公共財、争いは話し合いで」 =ADR現状と課題、日弁連インタビュー

 ◇制度スタートから10年

 ―医療ADRは最初に導入した東京三弁護士会の制度開始(2007年9月)から間もなく10年を迎える。今後の課題について教えてほしい。

 西内 思ったよりうまく機能している。課題は、もっと知ってもっと利用してもらいたいということ。(順調に進んでいるとはいえ)いまだに東京三弁護士会だけの件数で見ても、東京地裁医療集中部への提訴件数とは桁が違う。なかなか知られていないところが多い。

 児玉 どう表現するか難しいが、医療界が自分たちの紛争解決と対話の場として、医療ADRをもう少し上手にチューンナップしてくれるかと思った。ステップ1、ステップ2にしても、医療側で活動している弁護士が医療現場の気持ちをそんたくし、ADRを受け入れやすく使いやすい場にしようと努力した経緯がある。しかし、医療側はどちらかと言うと、第三者を入れないで自分たちのカウンセリング的な対応技術で紛争解決したい気持ちがとても強かった。真摯(しんし)に向き合って話をしていくのは大事なことだが、当事者同士が話し合って解決するのはスキルが要る。行司役が入ることによって、当事者の対話は実り多いものになる。
 ADRは制度設計が自由なところがいい。茨城県の医師会が弁護士会と連携しながらつくっていこうとしているように、医療界の側が上手な第三者の使い方にもう少し目を向けてもらえればと思う。多くの心ある医療者は、本当に患者さんに分かってほしいと思っている。そういう気持ちを実現するような第三者的チェックのよく働く、地域の実情に合わせた仕組みになればいいと考える。

 松井 一番必要なのは弁護士対象の広報ではないかといわれる。特に東京は専門弁護士以外の人が医療事件を扱うことも、いきなり受けることも増えている。一般民事の発想で、示談できなければ訴訟という頭になっている弁護士もいる。医療事件は示談できなければ、いきなり訴訟という簡単な話ではない。売掛金の回収とは異なり、依頼者はお金を欲しくて弁護士に紛争解決を依頼するわけではない。医療機関ともう少しコミュニケーションを取って、納得した上で解決したいという思いが強い。
 医療は公共財なので、相手をたたくだけたたいて終わりというわけではない。東京はこれだけ医療機関があるから、こちらの医療機関がだめならあちらに行けばいいというのがあるが、地域が小さければ小さいほど医療過誤に遭っても、その医療機関には絶対通わざるを得ない。そういうことを考えるとやはり医療ADRで100%の満足は無理かもしれないが、自分で納得して解決してきりをつけるのは、いい方法だと思う。

 増田 愛知県は医療ADRに医師の専門委員を入れているが、専門委員がリードし過ぎてしまうところもある。公平中立性をどう保てるかが課題。またあっせん人が1人で、その人のスキルにかかっているところがある。東京三弁護士会方式なら相互にチェックし合っていけるが、1人だとなかなか難しいところもある。
 県内では、患者本人が稚拙ではあるが申立書を書いて医療ADRに申し立てをしてきた場合、それに対して医療側が入り口で拒否して答えないのはおかしいという雰囲気がある。そのため医療側の応諾率も90%と高い。医療側は当初、弁護士会イコール患者側だから、そんな所に紛争解決は預けられないということを言っていたが、日弁連ADRセンターの特別部会でその後アンケートを取ったところ、医療側の回答の中では、弁護士会の医療ADRについて中立だという見方が多かった。医療側も弁護士会ADRが決して患者寄りではなく、真摯に医療紛争を解決しようとしている機関という理解が深まってきているように思う。ただ、地方では医療側の理解が進んでいない所もある。そういう所への広報は、今後さらに取り組んでいかなければならない。(了)

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