「医療は公共財、争いは話し合いで」 =ADR現状と課題、日弁連インタビュー
―あっせん人はどう選ぶのか。
松井 入り口は申立人の希望。申立人が医療側であれば、医療側の要望が中心ということ。ただ医療側が申立人になっているのはすごく少ない。患者が申立人の場合、患者側が(どの弁護士をあっせん人にしたいか)希望を言う。医療側は患者側の選定にOKを出す場合もあるし、反対する場合もある。弁護士会側で選ぶ場合もある。どちらにしろ、最終的には双方の同意を得なければならない。
―あっせん人の体制は将来どうなるのか。
松井 3人体制など複数が完全に主流になるだろう。複数だと第1回期日を入れるのは結構大変だが、それでも(申し立てから解決まで)平均200日ぐらいで決着し、期日も(訴訟よりもはるかに少ない)3、4回で解決するケースが一番多い。
―東京以外の弁護士会ではどうか。
松井 東京三弁護士会の方式ではあっせん人3人体制の場合、うち2人は医療側代理人の経験が豊富だったり、患者側代理人の経験が豊富だったりする専門弁護士だ。しかし、これは(各分野に専門的な弁護士がいる)都会ならでは体制といえる。東京のやり方が全地域に当てはまればいいが、うまくいかないこともある。各地域でできる工夫があるのだと思う。
増田 愛知県は普段から患者側の弁護士も、医療側の弁護士も非常に熱心にやっている人が多い。医療側の理解も進んでおり、申し立てに対する応諾率も(全国的に見ても非常に高い)90%ぐらいに達している。県内のADRでは、患者、医療機関双方に代理人の弁護士が付く場合が多いので、仲裁するあっせん人は、損害賠償などをよく知っていれば医療事件をあまり知らない弁護士でもいい。どうしても医療知識が不足するときには専門医制度を使い、県内4医科大学の各診療科目の専門医に診断をお願いする手助けをいただいている。基本的にあっせん人は1人体制で、必要であれば医師に協力を仰ぐ形にしている。
医療事件は非常に難しいから、医師を医療ADRのあっせん人に加えたらいいという意見もあったが、それでは形の上では中立ではないという考えもあった。それで医学知識についてあっせん人が教えてもらう形でこれまでやってきて、結構うまくいっている。東京三弁護士会のやり方も非常に参考になったが、使ったことはない。
(2017/01/04 16:03)