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花粉症を乗り切る=大切な初期治療

 2016年12月の日本気象協会の花粉飛散予測によると、2017年春のスギ花粉の飛散開始は例年並みで、2月上旬から始まる見込みだ。患者が増え続ける中で、さまざまな花粉症の治療や対策が紹介されている。2016年には二つの新薬が承認され、市販薬や後発医薬品(ジェネリック)も含め、治療薬の選択肢は広がっている。薬に頼らず、予防やアレルギーに強い体をつくることに重点を置いた対策への関心も高い。花粉症のつらいシーズンをどう乗り切るか、事前に知っておきたいポイントをまとめた。

 ◇飛散ピークの2週間前から

  今や日本人の国民病と言ってもよい花粉症。目がかゆくなり、鼻水やくしゃみの症状が現れると、薬局や病院へ駆け込む人も多い。花粉症治療に詳しい、JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師によると、できる限り症状を軽くして花粉シーズンを乗り切るには、「初期療法」が何よりも重要だという。これは、鼻アレルギー診療ガイドラインでも推奨されている。治療開始は、花粉飛散のピークが来る2週間前が目安だ。2月14日のバレンタインデーあたりに当たるので、遅くとも2月に入ったら、症状がなくても治療を開始するとよい。初期治療により症状が出始めるのが遅くなり、ピーク時でもかなり症状が抑えられる。

 ◇基本は医療用の薬

  初期療法でどのようなことを始めればよいのか。

「対症療法ではありますが、最近は眠気などの副作用が少なく効果が高い薬が幾つか出てきています。花粉症の症状を抑えるだけであれば、シーズン中は薬で十分乗り切れます」

 花粉症の薬で中心となるのは、アレルギー症状を改善する抗ヒスタミン薬で、第2世代の抗ヒスタミン薬を代表するのが「アレグラ」だ。2013年に発売された「ディレグラ」は、その「アレグラ」のアレルギーを抑制する成分「フェキソフェナジン」に、鼻詰まりを抑える薬として広く使われてきた「プソイドエフェドリン」が配合されている。アレグラより効果が高く、プソイドエフェドリンは交感神経を刺激する作用があり、眠気が起きにくい。

 2016年9月に新たに二つの新薬「ビラノア」と「デザレックス」が承認された。ビラノアは空腹時に服用し、デザレックスは服用時間には関係なく、1日1回の服用で24時間効果が持続する。どちらも即効性があり、従来の薬と比べて眠気をあまり催さないのが特徴だ。従来の薬では仕事に支障があり、服用を控えていた人でも試してみる価値がある。ただし、デザレックスは12歳以上、ビラノアは15歳以上と、どちらも使用年齢に制限があり、小児には使用できない。

 ◇ステロイド点鼻薬を併用

 内服薬と併せて使用したいのが点鼻薬だ。特にステロイド点鼻薬は、症状が出る前から初期療法として継続的に用いることで、鼻の症状だけでなく、眼の症状も抑えられる。体全体への影響も少なく、鼻アレルギーの治療ガイドラインでも第1選択薬として推奨されている。気を付けたいのが、市販されている薬に多い、血管収縮剤の入った点鼻薬。この薬は鼻詰まりを改善させるのに最も効果がある。しかし、長期間にわたって繰り返し使うことで効果が短くなり、逆にリバウンドで粘膜が腫れ、鼻詰まりが重症化し、治らなくなる危険性が高い。本当につらいとき以外は使用しないようにしたい。

 医療用内服薬でトップのシェアを占めていたアレグラとアレロックは、特許が切れたことで市販薬として薬局で気軽に買えるようになった。ただ、市販薬は医療用の処方薬と比較すると、効き目が穏やかな物が多い。石井医師は「つらい症状のときに飲んですぐに効く軽症の人であればよいのですが、初期療法から始めてシーズンいっぱい使用する場合は、自分に合った医療用の薬を処方してもらった方が効果的です。金銭的な負担も軽く済みます」とアドバイスする。

 ◇薬以外にもある対策

 薬以外の対策も紹介しよう。レーザー治療は、鼻の粘膜にレーザーを当てることで表面を削り、粘膜内の分泌腺や知覚神経が破壊することで鼻水やくしゃみが出づらくなり、アレルギー反応が緩和される。眠気で仕事ができないなどの理由で薬が使えない場合によく行われてきた。ピークの2カ月ぐらい前に治療を受けると、そのシーズン中の症状を一時的に抑えられる。半面、繰り返し行うと、粘膜にダメージを与えるリスクもある。

 アレルゲンを少しずつ体の中に入れ、過敏なアレルギー反応を起こらないように慣らしていくのが減感作療法だ。「シダトレン」という薬は舌の下で行う舌下減感作療法として2014年に保険適用となった。ただし治療開始時期は6月からで、3年間継続する必要がある。旅行や入院などで中断すると最初からやり直さなければならない。スギ花粉以外には効果がなく、人によっては口腔内に副作用が起きるなどのデメリットもある。医師の間でも賛否両論があり、受けられる医療機関が限られている。

 どちらも花粉症の薬だけで改善しなかったり、薬を飲むことができなかったりする場合に対象となる。

 ◇鼻洗浄もお勧め

 シンプルでお勧めなのが、鼻に着いた花粉やほこりを塩水で洗い流して、除去するという方法だ。インドが発祥であるヨガの浄化法の一つで、「ネティポット」という独特の道具を使って体内を浄化する目的で行われる伝統的な健康法でもある。鼻の粘膜に付着したウイルスを洗い流し、体内に侵入させないという効果がある。花粉の時期だけでなく、習慣的に行うことで、風邪やインフルエンザなどウイルス性の病気も予防できるという。ヨガで使用するネティポットは慣れないと使いづらいが、市販の用具であれば、初めてでも自宅で簡単に始められる。薬局やインターネット通販で購入できるので、試してみてはどうか。

 鼻洗浄を行う上で注意することは、以下の3点だ。

 1、洗浄水の温度を41度ぐらいにする。

 2、真水ではなく、塩水もしくは市販の洗浄水を利用する。

 3、鼻に刺激を与えないよう、気持ち良い程度で軽く洗い流す。

                       (ソーシャライズ社提供)


■石井正則医師 JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長
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