インタビュー

学校現場と連携した女性アスリート支援を
オンラインでの幅広い啓発にも期待 能瀬さやか医師

 無月経やつらい月経痛(月経困難症)といった女性特有の健康問題に悩むアスリートは多い。放置すれば、骨粗しょう症や疲労骨折、摂食障害などにつながる恐れもある。成長期の十代の選手にとっては、将来の健康問題や不妊リスクにもつながりかねない。

 一般社団法人女性アスリート健康支援委員会(日本産科婦人科学会、日本スポーツ協会など5団体で構成)は、医学的知識に基づく健康問題の予防と適切な対処法の普及に向け、医師やスポーツ関係者、学校関係者らに対する啓発を進める。コロナ禍の中、2020年度はどのように活動していくのか、同委員会理事を務める東大病院女性診療科・産科の「女性アスリート外来」担当、能瀬さやか医師に聞いた。

 能瀬さやか医師
 ―女性アスリートの健康問題を啓発していく上での要点は。

 一つは、スポーツ医学の分野で「女性アスリートの三主徴」として知られる「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」の問題。過度の体重制限やオーバートレーニングで運動量に対し食事量が追い付かず、スポーツに参加する上で必要なエネルギーが不足すると、月経が3カ月以上止まる「無月経」に陥りやすい。無月経になると、骨を丈夫にする女性ホルモンの分泌が抑制されて骨粗しょう症になる恐れもある。女性が最大骨量を獲得するのは20歳前なので、十代の選手にとっては生涯の健康を左右する深刻な問題だ。

 もう一つは、月経困難症や月経前症候群(PMS)、過多月経といった月経随伴症状の問題。日常生活に支障を来すほどつらい人も多く、不妊リスクを高める子宮内膜症の進行につながることもある。

 ◇コロナ禍で企画変更、誰でも受講できるセミナーに

 ―女性アスリート健康支援委員会は今年2月、「女子選手のヘルスケアを考える」と題したカンファレンスを東京都内で開催したが、20年度の取り組みは。

 20年度も、そうした集会を2回に分けて実施するつもりだったが、コロナ禍を受け、オンラインセミナーに変更した。スポーツ庁から東大病院女性診療科・産科(東大医学部産科婦人科学教室)が委託を受けた「女性アスリート支援プロジェクト」の一環として、今年7月から来年2月までの間に、女子選手をサポートする各分野の専門家を講師に計21本の講義映像を配信していく予定。集会だと、参加者の人数が限定され、遠方の人が参加しにくいという面があるが、オンラインセミナーは、全国から誰でも、多くの方に参加いただけるのがメリットかなと思う。

 ―どのような狙いでセミナーの内容を企画したのか。

 「Basic編」「Advance編」「Reseach編」の三つに分かれている。「Basic編」は、月経の基礎知識や無月経、月経随伴症状、子宮内膜症、貧血といった健康問題について、高校生以上なら誰でも学べる内容とし、「Advance編」は選手特有の健康問題への実際の対処法を学べるよう企画した。

 運動性無月経は利用可能エネルギー不足の改善が何より重要。つらい月経随伴症状の軽減には、コンディショニングの点から月経周期調節も可能なピルの使用が選択肢となることも理解してほしい。

 「Reseach編」は研究者や指導者向けで、スポーツ庁の委託を受けた調査研究を行っている研究者に講師を依頼した。こうした専門家と連携して、必要な情報を積極的に発信していきたい。

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