新型コロナ「見えてきたもの」
当初から携わる専門家報告 国立国際医療研究センター 忽那賢志国際感染症センター医長
「国内に患者が出てきた当初から診てきた経験から、治療法や症状の推移など学べたことも多く、見えてきたことも多い」
集団感染の発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が停泊する大黒ふ頭を出る救急車両=2020年02月16日、横浜市【時事】
今年初めに中国・武漢市で新型コロナウイルスによる感染が問題化した時から注目し、集団感染(クラスター)の発生したクルーズ船の乗客や中国からの渡航者、帰国者から現在の患者まで新型コロナに携わってきた国立国際医療研究センターの忽那賢志国際感染症センター医長が、都内で報道関係者らを対象に新型コロナをめぐる最新の状況を報告した。
◇感染気づかず拡大
新型コロナ感染症の症状の推移は当初、「風邪のような症状が続き、その後一部の患者で肺炎など重症化する」とされてきた。忽那医長は「感染してから風邪のような自覚症状が出るまでおよそ5日。それから7~10日間、発熱やせきなどの症状が続くが、多くの人は回復する」と指摘。この間感染に気づかずに社会的活動を続けてしまうことが、感染拡大につながっている、と強調した。
忽那賢志医師提供
回復しない20%前後の患者はその後、症状が重くなり、肺炎状態に進行する。さらに、この段階でも回復しない5~10%が人工呼吸器などを必要になるほど重症化する。忽那医長は、自身の診療経験やさまざまな海外からの報告を総合しながら、新型コロナの進行状況を説明した。
◇症状出る前がピーク
これらが新型コロナの感染対策を難しくしている。症状が出る前から出始める頃までが、症状が重くなった時よりも周囲に感染を拡大させる確率が高くなる。この点について忽那医長は、「これまでは症状が出てから対応すればいい感染症を相手にしてきたが、新型コロナは症状が出る前に感染性のピークがある、初めての感染症だ」と言う。予防には、症状がなくても、常に唾液の拡散を防ぐことで感染を抑制するマスクを常時着けることが求められる。
◇段階で薬使い分け
病状の推移が分かってきたことで、治療法もある程度見えてきたようだ。感染初期の風邪症状から呼吸困難の始まる時期までは体内でコロナウイルスの増殖期と言えるので、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が有効になる。逆にその後は、ウイルスの増殖自体よりも、患者自身の免疫がウイルスに過剰に反応することで呼吸器内の炎症が悪化し重症化につながっていることも分かってきた。このためこの段階では、炎症を鎮めるステロイドや免疫調整薬が有効だと、忽那医師は分析した。
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(2020/09/15 07:00)