新型コロナ「見えてきたもの」
当初から携わる専門家報告 国立国際医療研究センター 忽那賢志国際感染症センター医長
抗体を含む血漿を回復者から採取=忽那賢志医師提供
◇抗体を抽出、投与
これまでメディアなどで紹介された治療薬の評価とは別に、海外で先行し、国際医療研究センターでも臨床研究が進めている「回復者血漿(けっしょう)」についても時間を割いた。これは一度新型コロナに感染・発症して回復した患者から血液を採取。回復過程で得られた抗体を含む血漿を回復者から採取・保存し、闘病中の患者に投与する方式だ。
「(世界的なインフルエンザ大流行と知られる)『スペイン風邪』の際にも使われた治療法だが、中国や米国で実際の治療に用いられて一定の効果を上げている」として、同センターでも回復した患者に対して血液の提供を呼び掛け始めた。
忽那医長は「ただし、抗体の強弱や提供を受ける患者の病状に治療効果が大きく左右されてしまうようだ。米国の研究では、抗体価の高い回復者から採取し、入院3日までの患者に投与すると効果がある、と報告されている」と説明。国内でも十分な血漿が確保されれば患者への投与も予定している、と言う。
講演する忽那賢志国際感染症センター医長=日本医学ジャーナリスト協会提供
◇再感染と免疫の持続
一度新型コロナに感染して治癒した患者がその後再度感染する「再感染」が関心を集めている。今年3月に香港で感染・発症した男性が治癒してから欧米を旅行し、再度発症が確認された。
忽那医長は「この男性はそれぞれの検査で得られたウイルスの遺伝子配列が異なっており、ほぼ5カ月の間隔で再感染したことになる」と分析。その後、確認例だけで8件の再感染が報告されていることを紹介した上で、「感染・治癒で獲得された免疫がどれだけ持続するかという問題に、大きな影響を与えることになる。注目すべき課題だ」と語った。
◇後遺症の報告例も
一方、日本でも話題になった後遺症についても触れ、イタリアやフランスなどから、倦怠感や呼吸苦だけでなく、記憶障害や集中力散漫、脱毛などの症例が一定数報告されていることを紹介した。その上で「自分が診た例でも、その症状や日常生活への支障の度合いが異なるが、重症肺炎の後遺症と言い切れない症状も少なくない」と述べた。(喜多壮太郎)
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(2020/09/15 07:00)