医学生のフィールド

先輩医師から学ぶ「豊かな人生」を創る秘訣-医学生がオンライン講演会企画

 

 ◇自分にとっての研究の目的は何か

 「研究はなぜするのか」にはさまざまな答えがあります。多くの学術活動の目的は「業績をつくるために、自分の意見や主張を発信する手法を学ぶこと」だと思います。しかしポジションや分野によって求める知識は異なります。われわれ学生にとっては大学院などで専門分野の最先端を学ぶことが主な研究の舞台のように見えます。しかし、未知の分野に切り込む一歩目にはまず「他人の研究を理解する」ことが必要になります。また、広い分野の疾患を診療しなければならないゼネラルなスタイルの先生にとっては専門分野以外の「自分の知識のアップデートのため」にさまざまな分野の研究結果に触れる必要があります。このように研究の目的にはさまざまなレベルがあってしかるべきです。

 医師は一生学び続けなければなりません。自分ができる技術を落とさず、変わりゆく最先端についていくために常にアップデートが必要です。Soul-in先生は「臨床をうんとしないと臨床研究はできないし、臨床研究をすることで臨床のレベルも上がる」と話されました。医師になれば、若手のうちは自分の診療を先輩やさらに上の指導医が見守ってくれます。では自分が科長や教授になって、自分に指導医がいなくなったら誰が自分の診療を正してくれるでしょうか。答えは自分以外にありません。自分の施設の治療成績や合併症を振り返り、診療レベルを評価することは誰かがしなければなりません。そのための技法を学んでいるのではないかと思いました。

 さらに研究は学会発表で終るのではなく、英文で論文にすることを強調されました。将来的にアカデミーでのポジション取得のためには英語の論文が医者の業績になります。そして論文には必ず一つは「世界で初めてのデータ」がなければなりません。業績を積むのであれば、一定の症例数や研究施設を有する大学や基幹病院を選ぶことが必要となると教えていただきました。

 そうはいっても、臨床力に余裕のない若手のうちは学術活動も十分にする余裕はありません。そういった若手が「研究を経験してみる」ために大学院があるとお話しいただきました。授業料を払って適切な指導者のもとで研究する時間を作ることも良いと思いました。

 ◇職場の悩みはほぼ100%人間関係にある

 Soul-in先生によると、良医になるためには人間的な成長が必要とのことです。例えば部活動において周りと協力することを楽しむ経験や、先輩後輩と信頼関係を構築する経験は全て社会人になった後で生きてきます。医療現場では医者はどうしても指示を出すリーダーになりがちです。患者さん、ご家族、スタッフ全てが満足するような医療をつくるためには、医学だけでなく人間関係の問題がつきものです。「人間関係の問題というものは、経験したことがなければ絶対に分かりません。自分の頭が柔らかいうちに、たくさん苦労をしておいてください」とおっしゃられたのが印象的でした。

 Soul-in先生からは、卒業後のキャリアの具体的な道筋を学生目線で分かりやすく教えていただきました。また学生でもできる自分だけのキャリアビジョンの立て方を教えていただき、大変貴重なお話をうかがえる時間となりました。ありがとうございました。

運営スタッフ 左上から金理志さん、中山碩人さん 樋口万里子さん、吉富櫻嘉さん

運営スタッフ 左上から金理志さん、中山碩人さん 樋口万里子さん、吉富櫻嘉さん

Soul-in@焼肉専門医 https://twitter.com/ngyx202 
 卒後10年目の消化器内科医。大学病院での初期研修後に市中病院へ勤務し、その後大学院に進み博士課程を修了し入局。現在はキャリア選択や働き方とお金の勉強など医学生・医師のための情報発信を続けている。Twitterフォロワー数は1万人で、DMで個別の相談を受け付けたり、学生向けのキャリア講演会を年複数回実施したりするなど若手の教育に精力的に取り組む。専門医・認定医:日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本医師会認定産業医。
講演会主催:学生団体メドキャリ

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