治療・予防

個人の感染防止策に限界
新型コロナ、専門家が強い危機感 欧州のような医療崩壊も

 本格的な冬を迎え、新型コロナウイルスの感染者や重症患者が急増し、感染確認者数は過去最高を更新している。政府が「Go To トラベル」事業を全国で停止することに加え、一部の都道府県では、飲食店の営業時間短縮や緩やかな外出自粛の要請を出した。しかし、感染症の専門家からは、こうした対応を踏まえても「現状では患者のさらなる急増で、欧州などのような医療崩壊が起きかねない。マスク着用や手指消毒など、個人の対策を徹底するにも限度がある。より根本的な対策が必要だ」と、危惧する声が上がっている。

クリスマスイブの夜、マスクをつけた人が行き交う池袋=12月24日、東京・池袋【EPA時事】

 ◇予想上回る感染者の増加

 「同じウイルスによる気道への飛沫(ひまつ)感染症である風邪(感冒)やインフルエンザの流行状況を考えれば、気温や湿度が下がる冬期に流行が深刻化し、患者数が増大する事態は想定していた。しかし、この冬の感染拡大や患者数増加のペースは予想以上だ。このままでは、2020年春の欧州のような、医療崩壊も起こり得るだろう」

 日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大学教授(感染症学)は、感染拡大が収まらない状況を、厳しい表情でこう語る。舘田教授は、危惧する理由について、「以前は、北海道は札幌、東京は新宿・歌舞伎町といったように、患者がある地域に集中していた。しかし、今回は東京だけでなく首都圏各県、北海道であれば旭川市と周辺地域にまで感染が拡大している」と言う。

 ◇20年夏とは異なる状況

 特定の地域に集まる人たちに感染が集中していた20年夏頃と違う状況にある。この冬は、日常生活を過ごす家庭内における感染や、より広い世代の感染が目立つ。

 舘田教授は「このような状況になれば、特定の場所を閉鎖したり、そこに集まる人の検査を徹底して患者を見つけ出したりすることが難しく、結果として、感染の封じ込めが厳しくなってしまう」と指摘する。

 ウイルスの活動を活発化させる低温や乾燥という気象条件が続き、感染が自然に縮小することは21年の春先までは期待しにくい。幅広い層に感染が広がり、重症化しやすい高齢者にも一定の比率で感染者が出て、医療機関の負担が大きい重症患者が増加していく事態が予想される。

東京・吉祥寺の商店街の人混み=12月20日

 ◇「コロナ慣れ」を憂慮

 もう一つ、舘田教授が心配するのが「コロナ慣れ」とも言うべき現象だ。舘田教授は「現在でも、8割くらいの人はマスクの使用や手指衛生の徹底、3密回避などの予防策を続けていてくれる。しかし、残りの2割の人が警戒感の緩みから、狭くて換気の悪い空間での会食など感染リスクの高い行動を繰り返しているような気がする」と言う。この2割の人たちの間で感染が拡大していけば、職場などで残りの8割の人にまで感染が広がることになる。

 「勝負の3週間」とされた期間でも、東京都内の繁華街の飲食店では、個室に大勢が集まって宴会を開く若者の姿が見受けられた。商業地区のレストランでは、昼食時に集まって談笑しながら食事を楽しむ主婦らしきグループもいた。医療関係者が「コロナ慣れ」「自粛疲れ」と呼ぶ現象は、なかなか収まらないようだ。

 ◇よりインパクトの強い対策を

 舘田教授は「ワクチンが普及しない感染症の拡大を止めるには、人の移動を抑えて、人と人が接触する機会を減らしていくしかない。特に新型コロナの感染リスクが高い飲酒を伴う会食を控えさせる対策を、よりインパクトの強い形で徹底するしかない」と強調する。

 危惧の背景には、欧米や中国と日本では、感染症に関する法制度が違うことがある。欧州や中国では、一般人の外出や都市間の移動まで規制する「都市封鎖(ロックダウン)」を実施し、感染の拡大阻止に効果を上げている。日本でも、感染症法により病気の重要度に応じて患者自身の隔離は強制的にできる。しかし、自宅からの外出の制約をはじめ、店舗や宿泊施設の営業、交通機関の運行などを規制する法律はなく、あくまで国や都道府県からの「自粛の要請」にとどまる。また、強制ではないことから補償制度もなく、「感染防止と経済の維持のどちらを優先するか」という議論に陥りがちだ。

年末年始に向けて警戒を呼び掛ける東京都の小池百合子知事=12月17日、都庁

 ◇遅れた法的問題の議論

 舘田教授は「本来であれば、医療体制の充実などと並行して、感染が小康状態だった20年の夏から秋にかけて法的な問題も整理しておくべきだったのかもしれない。法改正には多くのハードルがあり、すぐに解決できる問題ではないが・・・」と嘆く。

 この年末年始が過ぎて社会活動が再開すれば、感染者が再び、急増に転じる危険がある。舘田教授は「これまでのようにマスク着用や手洗いの励行、営業の短縮などをお願いしているだけでは不十分な状態になりつつある。このことを認識してもらいたい」と訴えている。(喜多宗太郎・鈴木豊)

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