医学生のフィールド

【医学生座談会】地域医療、診療科偏在、さまざまな問題にどう向き合うか
~日本専門医機構理事長 寺本民生氏を囲んで~ 新専門医制度のここが聞きたい Vol.1

 2018年からスタートした新専門医制度。今年の3月には多くの基本領域で専攻医の研修が終了し、専門医試験をパスすれば初の「日本専門医機構認定専門医」が誕生する。医師の働き方が多様化する中で、学生のうちから進路において選択肢を迫られる場面が増えている。将来のキャリア形成に大きな影響を及ぼす新専門医制度について、知っておくべきことがあるはずだ。2月20日、医学生4人が日本専門医機構寺本民生理事長を囲んで、オンライン座談会を実施し、医学教育や新専門医制度について疑問を投げかけた。

 聞き手:中山碩人(筑波大学医学類5年)、北川侑樹(筑波大学医学類5年) 松原颯(順天堂大学医学部5年)、樋口万里子(獨協大学医学部2年)

 ◇3足のわらじ、その原動力は人と向き合う楽しさ

 中山 専門医機構のトップを務められている寺本先生がどのようなキャリアを歩まれてきたのか、大変興味があります。寺本先生のご経歴について伺ってもよろしいでしょうか。

 寺本 私は東京の開業医の息子として生まれました。もともと農学関係に進みたいと思っていましたが、母親の強い勧めで東大の医学部に進みました。ちょうど東大紛争の時代で学生を7年間やっていて、ストライキの間に医学に対していろいろな見方ができるようになりました。

 父親は内科医で私の兄が外科医、私はプライマリケアに興味があり、最終的に家庭医を目指していたこともあり、卒業後は内科を選びました。東大で研修し、肝臓を勉強したいと思い第1内科に入って、脂質代謝を専門としていたのですが、今はどちらかというと動脈硬化、循環器を主としています。その後、東京大学から帝京大学に移り、学部長を任されるようになってからは、教育というものに目覚めました。

 今は若い頃に念願だった開業医として診療を行なっています。専門医機構には医学会から推薦された形で関わっていて、3年前に理事長の就任要請があり、現在に至ります。帝京大学では今も研究活動の支援を行なっていますので、現在は3足のわらじで、忙しいながらも楽しくやらせていただいています。

 中山 新しく制度を作るという大きな役割を担いながら、大学での教育や開業されて診療まで行うというのは、とても大変だと思いますが、モチベーションを保ちながら続けて行くための原動力は何でしょうか。

 寺本 私は午前中、大体自分のクリニックで診療しているのですが、毎日患者さんと接するのが非常に楽しいので、それが一つの大きな原動力になっています。もう一つは、若い方たちを育てたいという強い思いです。大学では研究担当理事という立場なので、若い人たちの研究のサポートや専門家になれるよう指導していますが、それが大変やりがいがあり、彼らと向き合うことも力となっていると思います

 ◇専門医制度構築に必要とされるゼネラルなものの見方

 松原 全身を診るジェネラリストとしての家庭医と専門性を高めていく専門医は全く方向性が違うと思うのですが、専門医機構のトップに推薦されたのには何か理由がありますか。

 寺本 おそらく私がどこかの学会をリードしている立場ではなく、家庭医的な発想をもっていたというか、ゼネラルな考え方を持っていたということがあるんじゃないかなと思います。専門医機構はいろいろな学会や組織との調整をするためにゼネラルに物を見るというスタンスでやっています。私は内科学会の理事長をやっていたので内科学会に肩入れするのではと思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

 ◇シームレスな医学教育の重要性

 北川 帝京大学で学部長をされていたということですが、現在の医学部の教育だったり、初期研修や後期研修だったりで何か思うことはありますか。

 寺本 学生さんたちを育てていく過程で、シームレスな教育がすごく重要だと思っています。ですから、大学の教育が基礎、臨床、その後に実習というこの流れをもっと融合した形で進むことを非常に望んでいます。私は学部長の時に教育カリキュラムの編成を提案して、1年生の時からできる限り臨床に関われる形で進めてきました。  

 今の国家試験のあり方にも問題があると思っています。基礎をやって臨床をやって、そしてまた試験の時には基礎も臨床も全てやらなきゃいけないという現在のこのスタイルは、改善すべきではないかと。おそらく文科省と厚労省との話し合いが進んでいて、今後は少しずつ変わってくるとは思います。若い人たちにもそういうシームレスな視点でキャリアを考えていただいた方がいいかなと思っています。

 中山 確かに5年生とか6年生ぐらいになってくると、基礎に立ち返りたいと思うときもありますね。

 寺本 そうですね。例えば、骨の名前を覚えるのって面倒くさいですよね。大学の解剖学の先生には、講義をするときは必ず外科的視点もしくは整形外科的な視点を入れた形で指導していただきたい。この骨のこの穴がどうしてあるのか、この溝がなぜ必要なのか、体の機能と融合させながら勉強していくことがとても重要なのです。

 私は基礎を勉強するときにはアメリカの教科書を使っていました。アメリカの教科書は、解剖や生理について、人間がなぜこのエネルギーをここで作らなきゃいけないか、こういう理由でその結果としてここがおかしくなるとこういう病気が起こるというふうな説明がされています。名前だけ覚えて表面的な知識だけを得るというのはなかなか難しいですよね。

 ◇専門医として常に最新の医学知識を習得しておく

 中山 新専門医制度の最近のニュースで気になっていることが2つあります。1つ目は専門医の取得時だけでなく、5年ごとの更新時にも試験が課されるということと2つ目が専門医の更新時に一定期間、地域への派遣が検討されていることです。この必要性について教えていただけますでしょうか。

 寺本 専門医制度改革の大きな目的の一つとして、国民がこの先生に診てもらえば安心できるという気持ちで診療が受けられるようにすることです。専門医資格は患者さんが医師を選ぶ際の大きな指標となります。医師が資格を保有するためには常に新しい知識を学び、技術を身につける必要があります。ご存じのように医療技術は日進月歩で進んでいます。新しい薬もどんどん出ています。試験というよりは医師が最新知識を確認できる機会ですね。諸外国では専門医資格の更新のための試験は当たり前のように行われていますが、日本にはそのようなシステムがなかったので、今後は専門医機構の中である程度、医療の質を担保しようということになったのです。

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