子どもの疥癬がひそかに流行
アトピーとの誤診で長期化も
疥癬(かいせん)は疥癬虫「ヒゼンダニ」が起こす感染症の一種だ。近年、高齢者の介護施設などで集団感染が話題に上ることが多いが、実は子どもの間でもひそかに流行している。適切な治療を行えば数週間程度で完治するが、怖いのはアトピー性皮膚炎との誤診。九段坂病院(東京都千代田区)皮膚科の大滝倫子医師は「ステロイド剤を使用すると、症状が悪化して1~2年も続いてしまいます」と警鐘を鳴らす。
◇集団感染の恐れも
ヒゼンダニは手首の内側や手のひら、指の間、脇の下、太ももなどに好んで住み着く。その際、ダニそのものや脱皮殻、ふんを免疫細胞が攻撃するため、かゆみや皮疹といったアレルギー反応を起こす。症状には赤い皮疹ができる通常の疥癬と、皮膚が灰白色に変質する角化型と呼ばれる重症の疥癬の2タイプがある。
前者はダニの数が数十匹だが、後者は100万~200万匹が寄生するため、隔離の必要がある。ダニは温度が16度以下や乾燥した状況下では活動できず、皮膚から離れると短時間で死亡する。基本的には、皮膚と皮膚との接触がない限り感染しないが、保育園や幼稚園などで雑魚寝をする際、布団が温かいとダニが移動するケースもある。
感染が発覚したら、雑魚寝をするような幼稚園や保育園であれば1週間、小学校であれば3日間程度は休みを取って治療に専念し、集団感染しているケースも考慮して対策を取る必要がある。疥癬の治療は、内服薬はイベルメクチン(商品名ストロメクトール)が主流だが、体重15キロ未満の子どもには使えない。
外用薬は、以前は主にクロタミトン(商品名オイラックス)クリームを塗ってかゆみを抑えていたが、現在は駆虫薬のフェノトリン(商品名スミスリンローション、アタマジラミの駆除剤とは濃度などが異なる)を塗るのが主流となっている。
◇専門医の診断を
疥癬の診断は、ダーモスコープと呼ばれる特殊な拡大鏡で行われる。ダニは「疥癬トンネル」と呼ばれるわずかに隆起した線状の皮疹に潜んでいるが、ごく小さな疥癬トンネルを見つけるのは難しく、粘り強い診察が必要だ。
また注意すべきなのは、症状が一見似ているためアトピー性皮膚炎と誤診されてしまうケースがあること。ステロイドのような免疫抑制剤を使用するとダニが生息しやすい環境をつくってしまうので、患部が悪化して長期化する。ステロイドを塗っても改善せず、家族に同様の症状が出始めたら疥癬の可能性が高い。
「感染症の治療の原則は早期発見、早期治療です」と、大滝医師は強調する。もし子どもに発疹ができたら、疥癬という可能性も念頭に置いて専門医を訪ねてほしい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2017/05/15 15:48)