喉に食べ物が詰まったら
~子どもと高齢者は要注意(昭和大学病院 土肥謙二教授)~
年末年始は餅など飲み込みづらい食べ物を気道(喉、気管)に詰まらせる事故が増える。特に幼児や高齢者は注意が必要だ。気道異物の応急処置について、昭和大学病院救命救急センター(東京都品川区)の土肥謙二教授に聞いた。
腹部突き上げ法(右)と背部叩打法(左2点)
◇救急要請と応急処置
土肥教授によると、特に誤嚥(ごえん)・誤飲を起こしやすいのは高齢者(餅、肉、パン、薬の包装シート、歯、義歯など)と1~3歳の子ども(ピーナツなどの豆類、ボタン電池など)だという。
異物が喉に詰まると、呼吸ができず、声が出せなくなり、喉を親指と人さし指でつかむようなしぐさ(チョークサイン)が見られる。また、気管に詰まると、せき込んだり、ゼイゼイといったぜんそくのようなせきをしたりすることが多い。薬の包装シートや義歯などが気道、食道などに引っかかると痛みを訴える。
応急処置としては、すぐ119番通報をするとともに、詰まっている異物を吐き出させる必要がある。「最優先すべきは窒息を防ぐことです」
方法は二つ。一つは、本人をうつむかせ、肩甲骨の中間あたりを力強く何度もたたく「背部叩打(こうだ)法」。もう一つは、本人が起き上がることができれば、背後から抱えるようにして腹部に手を回し、片方の握り拳にもう一方の手を当てがい、へその少し上、みぞおちの下を圧迫して突き上げる(腹部突き上げ法)。「どちらも圧力をかけて異物の排出を促すために、思い切り力を入れることが重要です」と土肥教授。ただし、妊婦や乳児に対しては、腹部突き上げ法は使えない。
◇体内残留の可能性も
口を開けさせ、外から異物が見えた場合は速やかに取り出す。気道が確保できれば、体を横向きに寝かせた側臥位(そくがい)にして救急隊を待つ。腹部突き上げ法は内臓を傷めることがあるので、腹部突き上げ法を行ったことを到着した救急隊に必ず伝える。
意識がなかったり、処置をしている間にぐったりと反応がなくなったりしたときは、直ちに心肺蘇生(胸骨圧迫による心臓マッサージ)を行う。心臓マッサージで異物が出てくるケースもあるという。
「異物が出てきても、まだ体内に残っている可能性があるので必ず医療機関を受診してください。診療科に迷ったら、『救急安心センター事業(#7119)』に電話してご相談を」と、土肥教授はアドバイスしている。何より誤嚥を防ぐためには、食べ物を細かく刻んで食べさせ、誤飲しやすいものは手の届くところに置かないことが大切だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/12/29 05:00)
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