治療・予防

つぶれた骨が手術で整復も
~脊椎圧迫骨折(総合東京病院 北川亮副センター長)~

 加齢などで骨がもろくなる骨粗しょう症の人は、尻もちをつく程度の衝撃でも背骨の一部がつぶれる「脊椎圧迫骨折」の恐れがある。骨折した場合、体を動かすと腰に鋭い痛みが走るため、寝たきりになりかねない。近年、手術で整復して早期離床を図る治療法が拡充しており、手術経験豊富な総合東京病院(東京都中野区)脊椎脊髄センターの北川亮副センター長に聞いた。

脊椎圧迫骨折

脊椎圧迫骨折

 ◇安静にして骨が付くのを待つ

 脊椎圧迫骨折の治療は、胴体にコルセットを装着してベッドで安静にし、骨が自然に付くのを待つのが基本。痛み止めの対症療法や日常生活動作を改善するリハビリテーションも行われる。

 しかし、何日たっても痛みがなくならないことや、体の重みで骨がさらに変形することがある。また入院・安静期間が長いと、高齢者では▽認知機能の低下▽足腰の衰え▽口の中の細菌が誤って気道に入って発症する誤嚥(ごえん)性肺炎―などの恐れもあり、その後の生活に影響が及び命にも関わる。そこで、痛みや骨の状態に応じて、手術による整復が行われる。

 ◇風船で広げ固定

 新たに3年前に保険診療に加わったのが、「椎体骨ステント留置術(VBS)」だ。まず背中の皮膚を切開して骨に特殊な器具を挿入。風船と金属製の筒(ステント)で、つぶれた骨を内側から広げ、元の形に近づくように整える。風船をしぼませて抜いた後、セメントを注入して固める。

 全身麻酔下で行うが、「手術は40分程度で終わるため患者の負担は小さく、すぐに痛みを和らげる効果も期待できます」。骨の変形が進んだ人にも有効性が期待できるという。

 ただし、VBS手術はセメントが患部から漏れ出る、整復した骨の硬さが影響し隣接する骨が折れる、といったリスクもあり、「ステントを使わない従来の方法を含め、骨の壊れ方などから適切な術式を選ぶことが重要です」。

 術後は、リハビリテーションで体力を回復させ、歩行能力を落とさないようにする。再骨折を防ぐため、骨密度を上げて骨の質を良好に保つ薬を続けることも必要だという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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