一流のレジリエンス~回復力~Dr.純子のメディカルサロン

両耳失聴から復活したジャズ奏者 吉本信行さん

吉本信行(よしもと のぶゆき)
ジャズ音楽家。1957年福岡県田川郡生まれ。30代からジャズのコントラバス、ギター奏者として日本各地のライブハウス、イベントなどで演奏。ニューヨークでCDをレコーディングするなど計5枚のCDを発売し、ジャズ雑誌などで高い評価を得ている。2013年に両耳失聴となるが、人工内耳手術を経てトレーニングを積んで復活。16年に米国で刊行された、聴覚障害を持つ音楽家を紹介した本「Making Music with a Hearing Loss」では、ジャズミュージシャンでは世界でただ1人と紹介される。現在、ジャズクラブ「下関バンドワゴン」を経営するかたわら、国内外の聴覚障害者イベントやライブハウスなどで演奏活動を続けている。

 海原 よろしくお願いいたします。病院にいる吉本さんから「完全に何も聞こえなくなった」というメールをいただいたときは本当に驚きました。耳が聞こえないという状態は聞こえる人にとっては想像がつかないと思います。そのストレスはいかばかりかと思いますが。

 吉本 健聴者の方は起きていれば、どんなに耳をふさいでも必ず何か音は聴こえます。さらに、完全な防音室に入って、外の音が全く聴こえない状態にしたとしても、自分が声を出せば、その声が自分の頭蓋骨を通して内耳に伝わり聴こえます。

 私たち完全なろう者は自分の声さえ全く聴こえないのです。内耳が死んでいるからです。自分の声も聴こえないということは、しゃべることもできないのです。声を出すと、聴こえないばかりか、声帯から発する振動だけが頭蓋骨に伝わり、気分が悪くなります。

 何も聴こえなかった数年間は、しゃべることもできないので、人と会うのが嫌になり、だんだんネガティブになっていきました。何も聴こえないだけでなく、激しい耳鳴り、めまいに襲われるのです。これが、耳が完全に聴こえないという状態です。

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