インタビュー

10代選手の低体重と無月経、一生を左右=東大病院「女性アスリート外来」の能瀬さやか医師

 ◇中高生の部活指導が課題に

 女子選手が産婦人科を受診しやすいよう、環境づくりも進められている。2014年、一般社団法人女性アスリート健康支援委員会(代表理事・川原貴・前国立スポーツ科学センター長)が発足。活動の一環として、女性アスリートのさまざまな健康問題に関する産婦人科医の啓発にも取り組み、各地で産婦人科医向けの講習会を開いている。

 能瀬医師もこの啓発活動に携わっている。「受診を考えている人は、受講した産婦人科医が委員会のホームページに掲載されているので、参考にしてほしい」と言う。

 現在、日本体育協会の指導者講習会でも女性アスリートの健康問題が取り上げられるようになっているが、思春期の選手の問題を改善するため、一番の課題だと考えているのは、部活動に励む中高生のスクリーニングの体制づくりだ。

 「中高生は男性の指導者に月経のことをなかなか言えないし、指導者も生徒にセクハラと捉えられる可能性もありなかなか聞けない。学校の現場で無月経の問題を拾い上げる人、体制がないと、問題が解決しないと思っている」

 こうした現状の下、養護教諭の役割にも期待している。「ほとんどが女性だし、学校の現場でキーパーソンになってほしい。選手の問題を拾い上げ、校医につなげて、選手を産婦人科医に受診させる体制を取りたい」と話す。養護教諭を対象にした講習会も開始しており、来年度にはもっと取り組みに力を入れていくことを計画しているという。

 障がい者の女性アスリートの問題も、取り組むテーマの一つだ。今年4月、日本パラリンピック委員会が発足させた女性スポーツ委員会の委員長に就いた。女性アスリート外来では「障がい者女性アスリート専用相談窓口」(fsports‐project@umin.ac.jp)も設けている。

 「女性特有の悩みがあったら、連絡してほしい。リオパラリンピックに出場した選手の調査をしたが、いろいろ問題を抱えていた。対策に力を入れていきたい」と能瀬医師は語った。(水口郁雄)


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