インタビュー

10代選手の低体重と無月経、一生を左右=東大病院「女性アスリート外来」の能瀬さやか医師

 ◇試合に合わせ月経周期コントロールも

 受診者を競技別で見ると、無月経で来訪する女性は、持久系の競技の選手が多い。能瀬医師は「一番問題なのは、競技人口を考えると陸上の長距離。本当に10代、20代で高齢者のような骨量になっている選手がたくさんいる」と明かす。20歳を過ぎた無月経の陸上選手が過去、疲労骨折を12回も繰り返していたケースもあったという。

 女性が生涯で最大の骨量を獲得するのは、通常20歳の頃だ。それまでに適切な骨量を確保しないと、20歳以降いくら治療を行っても、一般女性の平均値まで骨量が回復することは少ない。「だから、中高生は一生の健康を守るためにも一番大事な時期。目の前の競技記録を求めるあまり、10代から過度な減量を指示される選手は珍しくない。減量をきっかけに摂食障害になる選手も珍しくなく、長期的な視点での医科学サポートが必要」と能瀬医師。

 女性アスリート外来には「月経が来ている選手」も受診に訪れる。月経困難症(つらい生理痛)や月経前症候群(PMS=月経前の体重増加・腰痛・イライラ等の身体・精神症状がみられる疾患)などに悩む選手たちだ。

 こうした女子選手のためには、試合や練習日程に合わせた月経周期のコントロールも行っている。低用量ピルなどの薬剤を用いたホルモン療法だ。年間を通して薬剤を毎日服用する持続的な調節法の場合、月経困難症やPMSの治療にもつながる。

 能瀬医師は「ピルに対して『避妊のみに使う』『将来妊娠できなくなる』『太る』といったイメージを持つ選手は5年前と比較して少なくなった。中高生にホルモン剤について説明する機会も多い。一時的な吐き気頭痛といった副作用がみられる場合もあるので、最終的には選手と保護者、コーチらで相談して決めるよう説明している」と話す。


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