治療・予防

歯周病が関節リウマチに関係
口内ケアはしっかりと

 歯周病が動脈硬化など全身のさまざまな病気に影響を与えることは知られている。京都大学医学部付属病院(京都市)リウマチセンターの橋本求医師や同病院歯科口腔(こうくう)外科の別所和久教授らの共同研究で、歯周病が関節リウマチの発症にも関わっている可能性が明らかになった。

 ◇リウマチ発症の契機に

歯周病は関節リウマチのほか、さまざまな病気に影響。口内はしっかりケアしたい
 歯周病は、細菌によって歯肉が炎症を起こし、症状が進行すると歯を支える歯槽骨が破壊され歯が抜け落ちてしまう病気だ。国内では30歳以上の約80%が罹患(りかん)しているとされる。関節リウマチは、免疫システムの異常によりあちこちの関節が腫れて痛み、ほっておくと骨が破壊され関節に変形が生じる。日本では約70万人の患者がおり、女性に多い。

 関節リウマチの患者からは、「シトルリン化タンパク」という特殊なタンパク質に反応する抗CCP抗体という抗体が検出される。この抗体の検出が、リウマチ特有の免疫異常が体内で起きていることの証明とされる。しかし、橋本医師は「関節リウマチの発症前にこの抗体が検出されることがあります」と話す。

 歯周病の原因の一つである「ポルフィロモナス菌」がシトルリン化タンパクの生成に関わっているとされる。つまり、歯周病によってシトルリン化タンパクが生成され、さらに、それに体の免疫が反応して抗CCP抗体が作られることが、リウマチ発症のきっかけとなっている可能性があるというわけだ。

 ◇調査データを分析

 研究グループが2015年実施の健常者約1万人を対象とした疫学調査のデータを解析したところ、その約1.7%から抗CCP抗体が検出されて、歯周病が重度になるほど抗CCP抗体の値が高いことが分かった。

 この調査とは別に、関節痛を訴えて同病院を受診した72人を追跡調査したところ、歯周病と診断された人がその後2年以内に関節リウマチを発症する危険性は、歯周病ではない人に比べて2.7倍高くなることも分かったという。

 橋本医師は、「これらの調査結果により、関節リウマチと歯周病の非常に強い関係が確認できました。口腔ケアをしっかり行うことは歯周病の予防のみならず、関節リウマチのコントロールにもつながる可能性があります」と、その重要性を指摘している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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