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子どもの皮膚炎「とびひ」
プールの季節は要注意

 夏を迎えて学校や幼稚園、保育園でプールが始まると、小さな子どもを中心に流行するのが「とびひ」と呼ばれる皮膚病だ。汗を乱暴に拭ったり、あせもができてしまったりして皮膚表面の表皮に傷が付き、そこから細菌が侵入して起きる感染症で、正確には「伝染性膿痂疹(のうかしん)」と名付けられている。多くは皮膚に赤い発疹が生じる程度で治るが、中には水ぶくれになった皮膚が破け、粘液が皮膚表面を覆ってじゅくじゅくとしたただれが広まってしまうこともある。特にアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアー機能が低下している子どもなどは、感染する危険性が高まるので注意が必要だ。

 「紅斑』といわれる赤い発疹から始まり、次々に水ぶくれができてはつぶれて患部が広がっていくことから『とびひ』と呼ばれています」。NTT東日本関東病院(東京都品川区)皮膚科の五十嵐敦之部長は、こう説明する。原因となるのは黄色ブドウ球菌などで、通常は医師の診察を受け1週間ほど抗菌薬を使った治療を続ければ回復するという。

 ◇重症化したら内服抗菌薬

 ある程度狭い範囲に症状が限定されている場合は、抗菌剤を含んだ軟こうを患部に塗れば治ることが多い。症状の範囲が広がっている場合は、内服の抗菌薬が治療の中心になる。治療の間は、症状の程度にかかわらず、患部を清潔なガーゼなどで覆って感染源となる皮膚組織や体液などの飛散を防ぐ一方、患部を清潔に保つために毎日シャワーを浴び、ガーゼを交換することが大切だ。

 五十嵐部長は「ガーゼの交換時に痛がる子どもも多いので、シャワーでガーゼをぬらしながらはがして患部を洗い、新しいガーゼに交換するのがよいだろう」とアドバイスする。

 ただ、3日以上治療を続けても症状が改善されない場合は要注意だ。黄色ブドウ球菌自体は日常生活の空間にありふれた細菌だが、近年はさまざまな抗菌薬に耐性=用語説明①=を持つ「MRSA」と呼ばれる菌が増えており、抗菌薬が思うように効果を上げないケースもあるからだ。

 「耐性菌とはいえ、すべての抗菌薬が効かない事例は少ない。診察時に患部の分泌物を採取し数日かけて培養試験にかければ、どのような細菌か確定できる。耐性菌であっても、有効な抗菌薬に切り替えれば治療できる」と五十嵐部長。症状が長引いた場合は医師に報告し、可能なら皮膚科の専門医の治療を受けるようにしてもらいたいと言う。

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