話題

やっかいな慢性心不全
ストレスなどで重症化の危険

 ◇急性増悪が招く悪循環

呼吸状態を把握するマスクなどを装着して専用のエアロバイクをこぐリハビリ=NTT東日本関東病院
 怖いのが急性増悪だ。「風邪などが引き金になって呼吸困難に陥る。一刻を争う状態なので、すぐに救急車を呼び、専門医のいる医療機関にできるだけ早く搬送してもらう必要がある」と、山崎部長は強調する。

 入院して必要な治療を速やかに受ければ、生命の危機はまず回避できる。ただ一度起こすと、「これまで緩やかな下り坂のように低下していた心機能が、階段を一つ下りたかのように急激に弱まり、その後の治療や療養生活に大きく影響してしまう」。心機能の低下が急性増悪を再発させる可能性を高め、再発した急性増悪でさらに心機能が低下する、という悪循環に陥ってしまうことがある。

 何回も急性増悪と入院を繰り返すと、さらに心機能の低下を招く。山崎部長は「これまで有効だった治療の効果が低下し、回復しづらくなる。最終的には呼吸困難などの症状を緩和する以外に、打つ手がなくなってしまう段階に至る。ここまで来ると、緩和医療が中心にならざる得なくなる」と、つらい胸の内を明かした。

 ◇リハビリで機能回復

 このような「負のスパイラル」から抜け出すために有効なのが、リハビリによる心機能の回復・維持だ。通常のけがや手術後のリハビリと異なり、どのような強さの運動をどの程度の時間行えば心臓に過剰な負担をかけずに実施すればよいのか。以前は、その判断が難しいとされてきたが、リハビリの技術も大きく進歩した。

安川生太NTT東日本関東病院リハビリテーション科理学療法士
 同病院では、リハビリ中の血圧や脈拍数、呼吸状態の変化をリアルタイムで把握できるリハビリ機器を2018年4月に導入。進行した心不全の患者に対して過剰な負担にならない範囲でのリハビリを実施している。稲川利光リハビリテーション科部長は「簡単にできるような負荷でのリハビリでは筋力や体力はなかなか回復しない。

 一方、心不全循環器の病気で入院した場合には、負荷が過大だと病気を再発させてしまう。この矛盾を解決するため、高価だが、このようなリハビリ機器は欠かせない」と説明する。

 このリハビリ機器を使う際には、血圧計や心拍数計を腕に装着し、呼吸状態をフォローするためのマスクも装用してペダルを踏む。得られたデータは横の端末にリアルタイムに表示され、付きそう理学療法士や医師に伝えられる。

 この機器を使ってのリハビリに付き沿っている安川生太理学療法士は「健康な人でもこのマスクを着けてペダルをこぐのは、なかなか大変だ。リハビリ中に少しでも異常を示せば、すぐに中止して医師の診察を受けてもらえる安心感は大きい」と言う。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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