特集

大人になっても注射の恐怖
子どもの時に痛み緩和

縫いぐるみの人形に玩具の注射器で注射する子ども(東邦大学医療センター大森病院・原田香奈さん提供)
 近年、病気やけがに伴う激しい痛みだけではなく、採血や注射などごく普通の医療行為による痛みも、子どもの心身両面の成長に長期的に負の影響を与えるという認識が、医療現場を中心に少しずつ広がりつつある。例えば、これまでも髄液を採取するために腰に髄液採取針を刺す痛みを少しでも減らすために局所麻酔をしてきた。このように、医療行為による処置に伴う仕方がないと思われてきた痛みを最初から緩和させる考え方だ。

 針を刺す前に、スタッフがその治療や検査の意味を説明し、痛みを感じにくくさせる局所麻酔薬のクリームパッチ剤を使って痛みを軽減したり、注射の前後に縫いぐるみや片手でつかめる玩具などを使って子どもの不安や恐怖心を和らげたりするなどの工夫に取り組んでいる。

 ▽玩具も使用、不安和らげる

東邦大学医療センター大森病院「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」の原田香奈さん
 東邦大学医療センター大森病院の小児病棟で「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)」=用語説明=という専門職として、主に入院している患者の支援に当たっている原田香奈さんもこうした取り組みに携わっている一人だ。「患者である子どもに寄り添い、自分が受ける治療や検査の意味を年齢に応じて理解してもらうことが、不安や苦痛の軽減の基本となる。それができると、子どもが主体的に治療に臨め、さまざまな疼痛緩和の対策が生きてくる」と、基本的な姿勢を説明する。

 同病棟には、医療遊びのための専用玩具や、模擬薬を飲ませることができる縫いぐるみ、注射で針を刺される際に空いた手で握りしめることができるボール、治療中に子どもの関心を引けるようなキラキラ棒などさまざまな玩具がそろっている。原田さんによれば、子どもたちが点滴や注射を受ける前に、「これがあれば頑張れる」と、子ども自身で玩具を選んで処置室や検査室に向かうという。

 手術後の痛みや病気自体が引き起こす痛みは最小限に抑える必要がある。原田さんはそれだけでなく、日常の診療や検査で繰り返される注射や点滴、採血などに使われる注射針の痛みへの対策が重要だと指摘。「多くの子どもが最初に受ける医療行為でハードルが高いのは採血や点滴挿入で、この初回の痛みや処置を受けるまでの不安は後々まで尾を引く。さらに、治療の中で繰り返される行為であるため、子どもの注射針や針を刺す際の痛みに対する心的なダメージが蓄積される」と話す。

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