治療・予防

手術不要のケースも
甲状腺乳頭がん

 がんは早期発見・早期治療が重要とされる。しかし、甲状腺がんの約9割を占める乳頭がんの場合は、すぐに手術をしなくてもよいケースがあるという。日本医科大学付属病院(東京都文京区)内分泌外科の杉谷巌部長に話を聞いた。

 ▽超低危険度がん

 甲状腺乳頭がんは進行が遅いものが多く、特に1センチ以下と小さくて転移も浸潤もないと、生命に影響が少ない「超低危険度がん」と診断される。がんがそれほど大きくならないまま共存できる患者も少なくない。そのため、超低危険度がんの場合は、甲状腺の機能を保つことによって生活の質(QOL)を維持することを優先し、経過観察するケースが多い。ただ、経過観察を続けることに不安を訴える患者には手術を行うという。

手術せず済む場合も
 杉谷部長は「甲状腺がんには、早期発見・早期治療の原則はあまり当てはまらないと言ってもよいでしょう」と話す。ごく小さな乳頭がんでも、首の動脈硬化などを調べる超音波検査で簡単に見つかるため、過剰診断・過剰治療につながりやすい。現在では、放射線被ばくなどの経験がない一般の人は、甲状腺がん検診はすべきでないという考え方が主流だ。

 ▽手術が必要なケース

 死の危険もある高危険度乳頭がんの場合には、声のかすれなどの自覚症状に加え、リンパ節や肺への転移がみられる。しかし、高危険度がんであっても「治療をすれば10年後も患者さんの7割程度が生きることができます。心配し過ぎることなく、適切な治療を受けることが大切です」と杉谷部長。

 高危険度乳頭がんに対しては甲状腺の全摘出手術のほか、放射性ヨウ素の服用による放射線治療も行われる。これらの治療が効かなかった場合でも、がん細胞が増殖するために必要な特定のタンパク質などを狙い撃ちしてその機能を抑える「分子標的薬」もある。

 高危険度にも超低危険度にも当てはまらない低危険度乳頭がんには、甲状腺の半分だけを切除する「葉切除手術」を行うことが多く、術後10年の生存率は99%を超える。

 葉切除にとどめれば、甲状腺の機能が保たれるケースは多いが、がんの位置によっては声帯を動かす神経が傷つき、声のかすれなどの後遺症が残ることもある。杉谷部長は「特に低危険度の乳頭がんの場合は、体への影響を十分理解した上で治療を選択してください」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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