医学トップの視座

地域社会のリーダーを育成
医師国試合格率は「日本一」―自治医大

インタビューに応える永井良三学長

 へき地医療を担う医師の育成を目的として、1972年に自治医科大学が創設されて以来、自治医大は地域医療のリーダーを全国各地に送り出してきた。2012年に第3代目となる永井良三学長が就任してからは、へき地医療と総合医療の両方を担う地域社会のリーダーの育成に取り組んでいる。医学にとどまらず、幅広い知識と教養が求められる地域社会のリーダーをいかにして育成していくのか。教育理念とこれからの医療を担う医学生への期待を聞いた。

 ◇「地域枠」の先駆け

 自治医大は自治省(現・総務省)が公設民営大学として設置。医学部の入学試験は各都道府県の定員枠から選抜し、卒業後原則9年間、地域医療に従事すれば学費が免除される。ここ数年、医師の地域偏在を是正するために「地域枠」を設ける医学部が増えてきたが、自治医大が先駆けといえる。

 へき地医療のリーダー育成を目指した初代学長の中尾喜久氏、総合医の育成に取り組んだ第2代目学長の高久史麿氏の後を引き継いだ永井学長は、時代の移り変わりとともに、「医療を通じた地域社会のリーダーの育成」へと自治医大の役割を変えてきた。「地域医療を実践していくには、住民や行政、医師会などいろいろな人と交渉し、協力していくことが不可欠。そのために医学だけでなく幅広い知識と教養が必要」と強調する。

 自治医大の医師国家試験の合格率の高さは目を見張るものがある。13年から6年連続で全国第1位を維持し、18年の合格率は99.2%と全国平均の90.1%を大きく上回る。入学時の偏差値ランキング24位からの大躍進である。

 ◇4年次から臨床実習

自治医大の校舎

 「入学試験の成績と入学後の伸びは一致しない」と永井学長は断言する。自治医大が求めているのは「伸び代のある学生」。各都道府県での選考を経て、大学が合格者を絞り込むが、その基準は「企業秘密」として明らかにしないが、「経験とデータに基づいて入念な研究を重ねている」という。最近、世間の注目が集まっている女子学生への入試差別も無縁。女子学生は40%を超え、むしろ今年は女子の合格率の方が高かった。「卒業式で優等生を表彰しますが、演壇に上がってきたのが全部女性という年もありました」

 伸び代のある学生を伸ばすのは、大学の教育の力に他ならない。高偏差値の学生を集めても、卒業時にバラツキが生じるのが一般的だ。自治医大は、もともと学力にバラツキのある学生を6年間でトップレベルに育て上げていく。学力に不安がある学生がいれば、教育担当の教師が補習する。個人レッスンの時間は年間260時間に及ぶという。

 学生には常に学ぶチャンスを与えている。医学部では唯一、3年次に臨床実習の前提となる共用試験を実施。また、多くの大学では5年次から始まる臨床実習を4年次と5年次の2年間かけて行う。さらに、5年生で6年生と同じ卒業判定試験を受けさせ、5年生の時点で国家試験合格ラインを越えている学生には、6年次の秋まで授業出席を免除して自由な時間を与える。

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