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牛レバーの生食などが原因の腸管出血性大腸菌O(オー)157による食中毒では、生命に関わる溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすケースもあった。しかし、O157と関係なく発症する「非典型HUS」と呼ばれる症例もあり、徳島大学病院(徳島市)の香美祥二病院長(小児科)に原因などを聞いた。
▽外敵でなく自らを攻撃
HUSは小児だけでなく成人にも発症し、〔1〕血液中の赤血球が壊れる(溶血性貧血)〔2〕血小板が減少する〔3〕腎臓の働きが低下する―という特徴がある。腎機能の低下が進むと血液中の老廃物を除去できず、尿毒症になる。
非典型HUSは、全身倦怠(けんたい)感やせきなどで受診し、血液検査や尿検査で発見されることが多いという。非常にまれな疾患で、「重症化して入院するのは全国で年間100人程度」(香美病院長)。
発症には、体内に侵入した外敵と戦う免疫系の「補体」という物質が関わっている。血液中に幾つかの種類があり、外敵に反応して活性化する。
ただし、補体関連の遺伝子異常がある人では、感染症、手術、妊娠などをきっかけに制御不能な活性化が起こる。すると、細胞の膜に穴を開ける物質が産生され、臓器の働きが侵される。血管の内側が攻撃されて血の塊(血栓)ができ、血管が詰まって臓器に障害が及ぶ。腎臓は血流が豊富なため、補体活性化の影響を受けやすい。
▽活性化を阻害
非典型HUSの薬物治療では、特定の補体に結合して活性化を抑えるエクリズマブという注射薬が用いられる。原則的には2週間ごとに注射し、腎機能障害などを改善する。2020年9月には新薬ラブリズマブも使えるようになった。有効性はエクリズマブとほぼ同じで、4週間か8週間に1回の注射で済み、患者の通院負担軽減などの利点がある。
どちらも薬剤費が高額で、長期治療には経済的負担が課題だ。また、細菌の一種である髄膜炎菌の感染リスクを高めるため、投与開始前にワクチンを接種し、発熱などがあればすぐに医療機関を受診することも必要。香美病院長は「再燃を防ぐためには、風邪などを避けることも大切です」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/09/16 05:00)
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