治療・予防

「第6波」に備えよ
~新型コロナ、専門家が警鐘~

 新型コロナウイルスの感染者は減少したが、終息したわけではない。普通の風邪(感冒)を引き起こすコロナウイルスは、気温が低下し乾燥する季節に流行する性質があり、新型コロナウイルスも同じだ。専門家は、新しい変異株であるオミクロン株を含め再度、コロナの感染拡大の危険性を指摘している。

次の感染拡大に備え、専門病床の整備が進む=東京都内の病院

 ◇患者受け入れ体制の強化

 「海外の状況を見ると、規模の大小に違いはあるだろうが、冬場に再度流行する可能性はあると考えておくべきだ」

 国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染制御)はこう指摘する。「感染者が激減した現状は、いわば『ボーナス』だ。今のうちに感染拡大の『第6波』に備えて、患者を受け入れられる病床数を増やせるかどうかを医療機関ごとに確認しておく必要がある」と強調する。

 教授の言葉を裏付けるように、政府の方針を受けて各地の医療機関では、新型コロナ患者を受け入れるための個室や病棟の増設が進んでいる。特に人工呼吸器などの使用が必要になる中等症・重症患者については、都道府県立病院などの感染症指定医療機関を中心に受け入れ体制が強化されつつある。

 ◇困難なインフルとの識別

 冬場に新型コロナの診療が難しくなるのは、普通の風邪など発熱を伴う呼吸器感染症が増え、新型コロナ患者との識別が困難な場合があるからだ。「発熱した患者全員を、新型コロナ患者を受け入れるために開設している発熱外来だけで対処するのは厳しい。一般のクリニックで抗体検査などで患者を絞り込んでから、発熱外来に送るという形が望ましい」

 2020年はインフルエンザの患者が激減したが、これからは分からない。患者が急増する可能性は否定できない。特に高齢者や持病がある人、風邪にかかりやすい子どもがいる家庭では、発熱があった場合にどの医療機関を受診するか、どう連絡すべきかなどをかかりつけ医らに確認しておきたい。

実用化に向け動きが加速する経口抗ウイルス薬(米メルク社提供)=AFP時事

 ◇経口治療薬、供給不足も

 新型コロナで関心を集めているのが、飲み薬型の治療薬(経口抗ウイルス薬)だ。肺炎などを経て重症化した段階での治療は、人工呼吸器やステロイド剤を使用するタイミングなど、これまでの治療経験からある程度の実績を積み上げている。

 インフルエンザなどウイルス感染症に共通するのが、感染・発症直後の治療が有効な点だ。新型コロナも感染初期に手軽に投与できる経口抗ウイルス薬が普及すれば、治療のあり方は大きく変わる。

 米製薬大手メルクの日本法人は12月3日、飲み薬タイプの新型コロナ治療薬「モルヌピラビル」を、厚生労働省に承認申請した。このタイプの薬は、検査で感染が確認できた段階で地域のクリニックが投与し、重症化の抑制が期待されている。

 松本教授は「ある程度の有効性は確認されているので、期待はできる。しかし、世界的に見れば、供給が始まってもある程度の期間は供給不足になるだろうし、使用開始直後は副反応の問題も残る。当初は、治療薬を使用できる医療機関や対象患者もかなり限定されることもあり得る」と予想する。

 引き続き、マスク着用や小まめな手洗いなどの予防対策は欠かせない。(了)

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